いけっち店長血風録


 11月13日 池っち店長、狂ったようにニナ・パープルトンを語る

「何で皆、ニナ・パープルトンの良さが解らんのじゃああ!」

「何ですか突然。」

「ガンダム0083のヒロイン、アナハイムのニナさんじゃよ。」

「ああ、あの『私のガンダムが!』というアホセリフで有名な。」

「そりゃ、自分の作った物だからそう言うわい。ガンダム≠セからアホに聞こえるだけだろ。あそこが車だったり、壷だったりしろ。普通のセリフだ。」

「でも、主人公のコウとくっついたくせに、最後に裏切って昔の男(ガトー)を助けるんでしょ?」

「それだ!皆そうとしか見とらん。その意見を聞くたびに、『これだからヲタクは、女が解っとらん!』とか『読解力が無い!』とか思うわけよ!スパロボ大戦作ってる人達は、本当の所を理解した上で、一般的なニナ観に合わせているだけと見たが。」

「で、店長のニナ観は?」

「オレのニナ観ではないぞ。真実のニナの話だ!決してこじつけでなく、物語を正しく読み解けば解る事だ。大体、あの今西監督作品だぞ!」

「はいはい。」

「はぁはぁ……では、いくつかの説明しよう。」

「まず、ニナとガトーの関係ですが、恋人でした。」

「そうですな。」

「ここで、どーゆー二人だったか考えよう。何と言っても『あの』ガトーだ。義に殉じ、理想の為に命を掛ける侍なのは、誰でも解る。そんな男を愛しちゃったら、そりゃ、自分を捨ててジオンへ帰られても、恨んだり出来んよね。彼女も男によっかかるだけの女じゃなくて、スペシャリストとしての自分を持ってるワケだから。技術者として一人前の。」

「はぁ。」

「思うにニナは、愛するだけでなく、一人の人間としてガトーを尊敬もしてた筈だ。だったら、ジオン復興の為に闘うガトーを止めたりは出来ない。でも、一人の女としてのニナは、やっぱり愛する人を失ってキズつくわけよ。」

「ふむふむ。」

「そこへ、ニンジンも食べられない可愛いコウ・ウラキ君の出現。ガンダム繋がりで話も合うし、キズついた心を癒してくれるワケよ。」

「そんなんでいいんですか。」

「物語中盤、月で一人悩むニナが、『私どうすればいいの…コウ…』と言うシーンがある。ニナにとってコウは、ちゃんとした心の支えになっているんだ。私の可愛いアナタって感じ。で、ここからが重要なんだが、コウ・ウラキとはどんな青年か?ガトーにガンダムを奪われ、その怒りの勢いでガトーを追い回す、大儀無き子供なワケだ。戦士として、一人の男として少しずつ成長してゆくが、他人の事を考える余裕等、まだまだ無い。そんなコウに、ガトーがどんな人で、大儀云々だとか、ニナがコウに言えるか?『ガトーは大人なのよ。コウは子供。』『そんなー。じゃあニナはガトーの方がいいのかー。あぼーん。』言える筈無い。ニナはコウの子供っぽい所も愛してるし、ガトーを追うコウを立場上も止めれん。」

「そんな内面の葛藤が!」

「ちゃんと演出されている!アルビオン艦内で、コウを抱きしめたニナが、伝えられない想いに涙し、それを理解できないコウが、途方にくれるシーン。結局ニナは、二人を止める手段として強行策を取る。銃を向けてでもコウを押し止め、後でコウが気付いてくれる事にかけたのだ。自分の事しか考えられなかったコウが、自分を戦士として認めてくれた、ガトーのノイエ・ジールを見た時、『ガトー?…待っててくれたのか!?』と、器の違いを理解し、自分の突進がただの怒りだった事を知る。…軍に拘束された後も、ガトーの事を想い、沈黙を通す。そして大きく勘違いされているラストシーン!」

「帰ってきたコウに、ニナが笑いかけるシーンですな?裏切っといてどのツラさげてっていう…」

「そこだ!それが間違い!!あのシーンを良く見ろ!ニナは迷うように視線をさ迷わせ、次にコウと目を合わせ、そして安心したように微笑む!あれはコウがニナに微笑んだからだ!」

「はっ!?」

「ニナにすれば、仕方なかったとはいえ、恋人に銃を向けたのは心が痛む。が、彼女はコウの成長にかけた。そして、ガトーの信義と、二ナの心遣いを知ったコウは、ニナに微笑みかける事で、その成長を示したのだよ。『ニナ、ありがとう。心配かけたね。』と。そして微笑むニナ。見よ!画面にニナしか映さない事で、ここまで表現する見事な演出!これを曲解して、ニナをアホキャラ扱いするとは、何たる愚か!何たる無思慮!二ナのように自分の愛した人の成長を信じ、突き放す事の出来るのは、愛をちゃんと持つ事の出来る人にしか出来んよ!!良い女じゃないか!!」

「うーん、理屈は通ってますね。」

「理屈じゃないぞ。妄想ストーリーでもない。正しく作品を読み解けばこうなる。という話だ。気付かなかった人、曲解していた人は、是非もう一度0083のビデオを見直してほしい。そして、周りのニナ・アホ説≠信じている人達に、真っ向から立ち向かって欲しい!……ヲタクの、女性に対する理解力の無さに、びっくりするから。」
 
 

 てなワケで突然でしたが、あまりにも0083という作品が不憫だったので、解説してみました。ちゃんとニナの行動を勇気ある女性の行動∞それを最後に理解できたコウ・ウラキの成長≠ニいう、すっきりした見方が出来れば、義に殉じて滅んでいったジオン残党の美しさと対する連邦の悪どさという図式も、際立ってくると思います。

 ちなみに、小説版を読んでないのですが、読んだ人からは、自説が正しい事を支持していただきました。今度読まなきゃ。