FB徳島カードゲーム戦記カードスポット・LaLaport


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カードスポット営業日誌


 ゲーマーズららぽーと船橋店にて出張営業しておりました、“プロジェクト・カードスポット”
 大・大・大成功でした!!!
 ご来店の皆様、協力して下さったゲーマーズの皆さん、本当にありがとうございました。

 最終日には、信じられない事に地元の子供達や保護者の方々が
「このコーナーをつぶさないでほしい」
「もっと続けて欲しい」
と言って下さるほど。
 たったの9日間で、あっという間に受け入れて頂けたようです。
 お客様に喜んでいただき、存続を願われるとは、商売人冥利に尽きます。実に素晴らしい経験でした。

 本当に、充実した9日間でした。
「大型ショッピングセンターにカードコーナーを作ってみて、カードショップに来ないような一般のお客様に受け入れられるかどうか?」
「たったの3坪のスペースで、どこまで、エンターテイメント性・品揃えの両立した売り場が作れるか?」
という実験だったのですが、予想以上に喜んでいただき、やはりカードゲームはすごい人気なのだと再認識いたしました。
 では、9日間の出来事を、軽く列挙してみましょう。



1日目・金曜日
 お手伝いのオザわと一緒に現場に到着。立派なガラスケースが用意されている。
「うっひょ〜! こんなケース、欲しかったんだよなぁ!」「キター!!」
 大喜びでペタペタ触りまくる。

 予定ではこの日のうちに売り場を作り上げ、次の日の朝から開店するはずだったのだが、荷物発送に手間取ったため次の日の日中、什器(棚とかカードファイルとか)が着いてからの作業となる。
 つまり、売り場ができた時点が開店時間、という場当たり的展開。
 しかも明日中にちゃんと作れるかどうかさえ微妙。すでに暗雲が立ち込めている。
 内心心配ながらも、手伝いに来てくれたオザわを安心させるためにも明るく振舞う。
 が、そんなオレの心を知ってか知らずか、オザわは何も考えていない笑顔でクルクルとブレイクダンス。
 殺意が芽生える。



2日目・土曜日
 朝からドタバタと什器の設置。ネットを立てたり壁にシングルカードを貼り付けたり。

 が、朝から何人かの、ホームページの読者様がやって来る!
「いけっち店長さんですか?」
「うひゃあ」
「あれ? 今日から開店じゃなかったんですか?」
「うひぃ」
 まったく申し訳ない。

 売るものはまだ用意できていないが、せっかく来ていただけたのに何もしないのは申し訳ない。色々とお話したり、対戦したりでおもてなしする。

 夜、ブロッコリー社長の木谷様(愛称キダニー)出現! まだ売り場が完成していない。
うろたえるオレ「ぎゃああああ!」
社長「あれ? 今日から開店だったんじゃなかったんですか?」
オレ「すんまそんすんまそん」
 なのに木谷社長ときたら、当店売り場がより目立つよう、ゲーマーズ店内の手直しまで、社員に指示してくださる始末。本当にありがたい。

 夜中に、なんとか完成する。
 先にオザわを帰らせ、俺は電車を逃し、土地勘と距離感のないままホテルまでタクシーに乗ると、なんとタクシー代7000円!!! 鼻血が出る。マジ落ち込む。



3日目・日曜日
 ついに開店。
 細かい演出用の、ポップや看板などを作成しつつ営業する。小道具を買いにダイソーと店を往復。
 オザわがカッターで指を切りまくり、細かい作業において役立たずと化す。
 ガムテープをハサミで切りすぎ、ゲーマーズさんから借りていたハサミを2個クラッシュする。
 ワシらは疫病神か。

 さて、肝心のお店の状況だが、お客さま方、いきなりすごい食いつき。
 日曜日という事で家族連れが、隣の“トイザらス”さん目当てで通りかかるのだが、“といざらす”に直進していた子供が、直角に曲がって当店売り場に突入して来る。
「うわぁー! デュエルマスターズだー!!」
「遊戯王だー!!」
「ガッシュベルだー!!」
 わかりやすすぎる反応。
「ポケモンだー!!」
 子供は素直だー。

 が、やはりこういうコーナーを見たのが初めてのためか、買い方がわからないらしい。
 しゃがんで子供の目線を確認し、わかりやすく平仮名で「カードの買いかた」の説明ポップ(看板)を低い位置に付けていく。
 また、目立つ色の矢印ポップを作り、『これは?!』などと記入して、売り場内を誘導するようにしてみる。
 効果は抜群(ポケモン語)だ〜!という訳で、小さな子供、または始めてのお母様でも買い物ができる売り場になっていった。

 とは言え、やはり開店1日目。知名度もまったくないため、常に満員という訳でなく、売り場をオザわに任せてオレはデュエルスペースの子供達(ゲーマーズ船橋は無料デュエルスペースあり)と対戦。
 自分でもびっくりしたが、オレの事を知っている少年達が結構沢山集まっていた。
「オレみたいなタダのイナカのカード屋の店長を、なんで知ってるんだ。何かのワナか? はっ! まさかキダニーのさしがね?!」とか一瞬思うが、そんな意味の無い事するわきゃないし。
 見れば「わーい、店長と闘えるぜー」と無垢な瞳の少年半数、「うぇへへへ。ヤツを殺ればオレの名も挙がるってもんよ・・・」という謎の勘違いの瞳半数。
 やるしかねぇ!
「かかって来い! ガキどもがぁあああ!!!」
「うりゃああ!!」「おれもおれも!!」「死にさらせえぇぇ!!」
 壮絶なバトルフィールドと化す。
 13勝3敗!!(目算)
 40連勝近くの大記録を持つNACさん(中村名人)には及びも付かないが、まあこんなもんかと。
 使ったデッキは“マナソース”“民心に訴えないネオ・ばかナ”“マッハつるりん”でござったよ。にんにん。



4日目・月曜日
 オザわはお休み。わし一人でお店運営。
 近所の子供達が早くも常連と化す。
「すごいカードコーナーができたぜ!」
「マジ? 行ってみようぜ!」
という感じらしい。
 やはり徳島より子どもの母数が多いとしみじみ感じる。

 来てくれた子供達のデッキを見て、強化策を授けていく。
「いいか! カードゲームでまず最初に見るべきはドローカードだ! 殿堂制限に入ったカードがほぼすべてドローカードである事を見てもわかるとおり、手札の数が戦術の自由度を上げる! 遊戯王で最強のカードは【強欲な壷】でうんぬんかんぬん・・・」
 エライ人数が集まってくる。わしはハーメルンの笛吹きか。このまま黙ってトイレに歩いていったら、すごい人数の連れションになるなぁ、と企む。

 そのほかは、やはりインターネットでご存知になったという、大人の方がけっこうご来店になる。
 そういった方とは積極的にお話し、ホームページについての意見、カードゲーム業界に対しての提案などを伺う。

 また、これがけっこう意外だったのだが、当店通販でお馴染み“構築済みデッキ”をお求めの方が多い事。
「風船流ボルバルザークデッキは売り切れですか?」
「そりゃまあ、ホームページ上で売り切れの物はこっちでも売り切れでがんす」
 不思議と、『ホームページ上で売り切れでも、ここに来ればあるかも』と思われるらしい。
 逆手にとって、こっちに持ってきたカードプールで組めるデッキを、その時の“ララポート先行発売デッキ”または“限定発売デッキ”として発売する。



5日目・火曜日
 夕方までオザわが店番。その後徳島へ帰る。
 ここからはオレ一人だ。もし何かあったらえらいこっちゃ。

 この日は平日だというのに景気の良い売り上げ。この店の利用方法を理解した近所の方々が、一挙にシングルカードを買いに来た、という感じ。



6日目・水曜日
 “デュエルマスターズくじ”“遊戯王くじ”“ガンダムウォーくじ”など、50円や100円のくじの売り上げがすごい。
 わいわいがやがや、一人当たると他の子供も負けじとくじを引く。オレも一緒に引いたりする。引いたカードで凹んでいる子供がいれば、そのカードの使い方を教える。

 やはりお店には、買い物だけでなく、楽しみに来るものだよね。だからこういう、ただ買い物するだけでなく、楽しめるシステムはすごく重要。

 とある私立学校の学年主任先生ご来店。
 カードゲームのコミニケーション性を教育に生かす、重要、かつ具体的なお話をうかがう。めちゃくちゃ興味深い内容。
 やはりカードゲームは教育に良い。残る問題点を大人たちが解決していけば、子供達はより楽しく遊べて、大人たちも安心して与える事ができ、一緒に楽しめる最高の娯楽になるだろう。
 がんばるぞ。



7日目・木曜日
 9日間最低の売り上げ。とはいえ高いものが売れなかっただけで、客数的には結構な忙しさ。
 空いてる時間は記事を書いたり売り場を見直したり。本番である次の土曜、日曜までに、より良い売り場にしておきたい。
 イベントが終わった後、潰すのがどんどんもったい無くなるが。

 某大作カードゲームのデザイナーさんご来店。
「この売り場は、一ヶ月ぐらい続けて初めてデータになるんじゃないですかねえ」
「うーん、本来そうなんですけど、うちも人手不足でして。オレもずっとここに居るわけにもいきませんし」
「惜しいなあ」
 いやまったく。



8日目・金曜日
 彼女様ご来店。
 すなおに「わーい」と喜ぶが、彼女と会えた事を喜んでいるのか、手伝いが増えた事を喜んでいるのか微妙なところ。(はっ! ウソウソ。愛が重要!)

 これが実に有能な人で、カード屋なんかと全然関係ない、まっとうな事務職の人なのに、あっという間にゲーム屋のねーちゃんと化し、子供相手にくじやカードを売りまくる。ポップや看板の飾りつけについても意見を出してくれる。
 ハリーやしまむーもそうだが、わしの周りには有能な人が多すぎる。もったいないぐらいだ。だからオレが子供のよーに、自由に散らかし回れるのだが。



9日目・土曜日
 デュエルマスターズの大会開催。
 告知期間が5日ほどで、ここでしか告知していなかったので、正直人が集まるか心配だったが、24人とそれなりの人数。

 小学生の少年が、ららぽーと先行販売デッキ“連ドラ”を買って、いきなり大会参加。そのまま準優勝する。イエーイ。お売りしたオレとしても面目がたった。

 1位の高校生の少年は、カッチリとした“アクアンホワイト”だったが、連ドラとの決勝戦で1勝1敗。最終戦にもつれ込み、“紅神龍バルガゲイザー”で何か出たら負ける、というところまで追い詰められていた。
 その場にいた多くの観客にも、ここが勝敗を分かつのが一目でわかる場面だったので、“バルガゲイザー”のアタックで“トット・ピピッチ”が出た時は、一斉にため息が。
 じつに緊迫感のある決勝戦だった。
 やっぱり“連ドラ”は、派手で夢があってそれなりに強く、子供におすすめのデッキですな。

 さすがは土曜日。お客様もすごい人数。
 “カードスポット”はたったの3坪あまりしかないので、人々が身動きできない状態に。うーむ。やはりこうなったか。
 表の通路を通りかかる人も、“カードスポット”の人ごみを見て、「何じゃ何じゃ」「おれもおれも」と入ってくるので、ますますすごい事に。日本人はなんでこんなに人ごみが好きなんだ。

 しかしやはり、確信した。やはり大型ショッピングセンターなどの、「権威のある」しっかりしたお店にカードゲームコーナーを作ると、「ほほぅ、カードゲームってのは、子供の一時的なブームだと思っとったが、なかなかしっかりしたもののようじゃないか」と、大人に感じてもらえるみたいだ。
 そのうえ、“ガンダムウォー”などのかっこいい書き下ろしカードなどを、額縁に入れて大きく飾ったりすると、高級感も出て、「むぅ、ひとつ、集めてみるか」と興味を持ってもらえる。
 これが確認できただけでも、今回のプロジェクトは成功だ。カードゲームを、より幅広い人々に楽しんでもらう、そのための販売方法は見えてきた。

 あとは、製作会社の方々に良いものを作ってもらう事が肝心。まだまだ、ひとりよがりでノウハウを蓄積しないデザイナーが多すぎると思う。
 人に喜んでもらえる物を、“作る”という行為は、尊い。
 理想がある人、企業こそ、良いものを作り出してゆく。
 そりゃそうだ。「自分は(自分の企業は)、社会のおかげで生かされている」という感謝の気持ちがあれば、「社会に還元しよう」という気持ちが自然に出てくる。
 物を作る人、企業が、自分を生かしてくれる、社会に恩返しするにはどうすればいいだろう?
 それは、自分たちの作る物を、謙虚に、より良い物にする努力を惜しまない事じゃないだろうか。

 当店に、こんなメールが来た。
「自分は、今までデュエルマスターズを楽しんできたが、色弱で、10弾から入ったレインボーカードの文明色がわかりずらい。何とかならないか」
 正直、なかなか気付かない事だ。
だが、ご意見をもらった事で、我々は、「色弱の方にもわかりやすいように、“色”だけでなくもっと見やすい“マーク”で表記する必要がある」事を知った。
 こういった事を積み重ねて、ノウハウとして活かしてゆく事が、大切なんじゃないだろうか。



10日目・日曜日
 最後の営業日。
 ららぽーとではコナミさんの、“遊戯王ティーチングイベント”が大々的に行われており、そこで当店のチラシを受け取ったお客様が次々にご来店。
 山のようなシングルカードの展示を見て、みんな口をぽかーん、と開けて「すげーー・・」と驚いてくれる。楽しい。
「うわー、お金持ってこなかったよ!!」 「このお店、いつまであるの?! 買いに来るよ!!」
オレ「残念だなガキども、今日で最終日だ、ガハハハ!!」
 楽しい。

 閉店後、手伝ってくれた彼女に、お礼を兼ねてお食事。ワイン飲んでむせる。



11日目・月曜日
 祭りは終った。店を片付けて撤収するために来店。

 開店時間になると、近所の子供達がやって来て、「潰すなー!」「もっと続けてよー!」と叫ぶ。
 まるで転勤させられる熱血先生のようだ。
 「先生のウソつき! もっともっと色んな事、教えてくれるって、言ったじゃないか!!」って感じだ。
 なんか熱いものが込み上げて来るが、表面上は、
「ぐはは、さらばだガキども、精進せいよ!!」
と言い残す。

 開店日にご来店の、カードゲームが嫌いだ、と言っていた奥様がやって来て、
「あら、このお店おしまいなの? 色々教えてくれて、子供も喜んでたのに。こういうお店があるんなら安心だって、私も思ってたんだけど・・・・」
と言って下さった。

 僕はいったい、何を作ったのだろう。
 商売をやっていて、お客様に喜んでもらえる事は、本当に嬉しい事だ。
 「潰すな」とまで言ってもらえるお店。
 カード嫌いのお母さんが、子供を預けて安心だ、と言ってくれるお店。
 たったの一週間で・・・・。

 僕はこれから、何を作っていこう。
 ここで喜んでもらえた事を、何に活かしていこう。
 間違ってなかった。
 そして、今回の言葉をもらえたから、これからも間違うことは、できなくなった。

 夜、一人で祝杯を上げる。ワインを飲んで、むせた。


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