トップカードゲーム戦記ついつい長い返事を送ってしまったお便りシリーズ


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ついつい長い返事を送ってしまったお便りシリーズ その2


本物を伝える事の大切さVS今、評価されている物を認める勇気
〜僕の遊戯王に対する恥ずかしい過去〜



 お堅い話題の多い“カードゲーム戦記”。

 最初は「こんなの誰が読んでくれるんじゃろ?」
 と思いながら始めましたが、カードゲーム好きなお子様を持つ親御さま方や、時には業界の方々まで、多くの反響をいただきます。

 本当にたくさんの方々が、「これからのホビー」であるカードゲームの在り様に、大きな興味をお持ち下さり、また、子供たちへの影響を注視していらっしゃるように思います。
 嬉しく思うと共に、身の引き締まる思いです。今後とも、ご指導よろしくお願いいたします。

 さて今回ご紹介するお便りは、多くの反響を頂いた“デュエルマスターズ(以下DM)研究所・番外編”に寄せられたご感想です。
 お返事を2回書かせていただいたのですが、話の流れで、僕の過去の恥を描くことになってしまい、お恥ずかしい内容なのですが、どうかお読み下さい。



 FB様

 いつもDM研究所を楽しみにしております。

 今回の研究所83回、とても愉快に楽しく読みました。
 
 以前に「種族ごとに名前の約束があるぞ」というような記事を読んだときから、DMってそうなんだよなあ、と同感しておりましたが、とうとうその決定版を掲載され、ますますうれしく思いました。
 
 【不死身男爵ボーグ(1弾)】のフレーバーテキスト(「わかるか、相手よりでかい武器を持っているやつが勝つんだよ。」)を目にしたときのワクワク感と言いますか、単純明快さと言いますか、そこにDMの遊びを見つけて喜んではいたのですが、83回のような記事が生じることにこそDMの面白さがあるのではと思っております。
 
 僕のDMとの出会いは仕事でした。僕は映像の演出家をやっておりまして、ご存知かどうかわかりませんが、『おはスタ』で「男番長のデュエル一直線」「デュエルマスターズソウル」というコーナーがあったのですが、それを担当してました。
 
 当時、DMのゲームとしての面白さをドラマ内で伝えることは当然僕の仕事の主目的なのでしたが、僕としてはフレーバーテキストまでしっかり読んでくれよ少年たち、という思いもあり、【フェアリー・ライフ(10弾)】のテキストをドラマでそれとなく伝えたり(僕の思い込みですが)しました。
 
 その仕事のとき、【ブラッディ・イヤリング(1弾)】のCG本邦初登場に監督としてたまたま立ち会ったのですが、CGを見た音響効果担当に指摘されて答えられなかったのを悔しく、そして俺に聞かないでくれないかなあ、って思いました。【ブラッディ・イヤリング】が【小さな勇者ゲット(2弾)】の攻撃を受けて共倒れになるシーンでした。

 彼曰く、「ブレインジャッカーって、素材はなんですか。虫ですか、金属ですか」。僕は、「何を聞きたいんだ、お前は?」と思ったのですが、彼は「いやあ、素材がわからないと、破壊されるとき、どんな音をつけたらいいんですか、金属的な音ですか、それともグシャみたいな残酷な音ですか? わからないんですよ」。

 わかりませんよね。僕には答えられませんでした。

 で、83回です。ブレインジャッカーの「さて、こいつは難しいぞ」の本文! FBさんならどんな音を音響効果さんに要求されますか。

 アニメや漫画はあまりわかりませんが、映像を仕事にしているので映画には詳しいですが、「不落要塞ナバロン、15000」、出てきたら僕も狂喜乱舞しますね。
 ナバロンデッキ以外でデッキ組まないんじゃないですかね。「登頂野郎マロリー、500」、「爆弾親父ミラー、500」なども出たりして、「このクリーチャーはマロリーとミラー以外は破壊できない」とか・・・。

 そんなこんなで、NACさんとも知り合い(ドラマ内のターン進行表をNACさんに作ってもらってました)、たまにNACさんとデュエルするのですが、中村さんの【機怪人形ガチャック(8弾)】にどうしても勝てません。1勝1敗には何とか持ち込めても、勝ち越すことがどうしてもできません。この前も【憎悪と怒りの獄門(11弾)】でNACさんのシールド0まで攻められましたけど、とどめが打てませんでした。なんとかNACさんに勝ち越したいと思って、【崩壊と灼熱の牙(11弾)】の試行錯誤しているんですが、、、。

 「サルデター」や「アウゼス」など、僕も考えたことをHPで公表されるFBさんをうらめしく思ったりしたこともありますが、でもいつも参考にさせて頂いております。
 ちなみに【牙】はどう使ったらいいのでしょうか。FBさんの通信販売で「タップされていないクリーチャーを攻撃できる」【ガルカーゴ・ドラゴン(3弾)】や【ガトリング・ワイバーン(1弾)】を購入させてもらったりしたのですけど、【牙】自体に4マナかかりますから現実味は希薄なのですかね。

 今後もDM研究所は期待して拝見させて頂きます。どんどんDM研究、お願いします。

 毎回、面白い研究掲載していただきましてありがとうございます。

 いつもいつも楽しいです。

 K・N



 始めまして。カードキングダム 遊縁 代表取締役 池田です。

 楽しいお便り、ありがとうございました。

 【ブラッディ・イヤリング】の破壊音の話など、
「おお、クリエイターの会話だ!」
と、感心させられるお話でした。

 また、【フェアリー・ライフ】のテキストから、ドラマ性を伝えようとするくだりなど、
「こだわりと誇りを持って、作品を作っている」
 というお気持ちが伝わってきます。すばらしいお仕事だと思います。

 子供たちに与えるものだからこそ、余計に、クオリティの高い“本物”を作って行きたいですよね。

 僕たちが、ホームページ上で、特に“デュエルマスターズ”を押している理由もそのあたりです。
 数あるカードゲームの中で、子供たちに与えるべき“本物”だと思うからです。

 最近は、“遊戯王”も完成度が上がってきていますが、その他はまだまだ、適当に作ったものが多いようです。子供たちが、こういったブームに便乗したクオリティの低いものにだまされないように、今後も業界の成熟化に貢献していきたいと考えています。
 少子化問題とか色々ありますが、だからこそ、数少ない子供たちは、この国の未来のための宝だと思います。
 子供たちに影響を与える仕事をしている事に、責任と誇りを感じます。お互い、がんばりましょう。

 ところで、【牙】ですが、実に単純な話なのですが、【根絶のデクロワゾー(10弾)】を使うというのはどうでしょうか。
 出した次のターンに【牙】を撃てば、効果が期待できるように思います。

 では、失礼いたします。




池田様

 返信、うれしく、そして頼もしく読ませていただきました。

“本物”を提供できるのは、“本物”を知っている者しかできないと思います。
 自分がどれほど“本物”を知っているのか、それは現時点で満足するものではなく、常に自分自身求めていくべきものでしょうが、それでもその時点で自分の信じうるものを視聴者に提供していくことが大切なのだと、考えてます。

“本当に”面白いものでは決してないテレビのドラマや映画を面白いと観る視聴者を責めるのではなく、“本当に”面白いものを提供してこなかった作り手にこそ責任があるのだと、自分たちが認める必要があるのだと思います。

 この世界に飛び込んでくる若い子達のほとんどが、映画『踊る大捜査線』は見ていても、『ナバロンの要塞』など名前すら知らないのが実情です。

 ですが、『ナバロンの要塞』を知らないことを責めてはいけない。『踊る大捜査線』が『ナバロンの要塞』と比べて少しも面白くないこと、そしてそんな『踊る大捜査線』を面白いと認識してしまう感性に彼らを導いたのが作り手そのものなのだ、ということを危機的事態なのだと認識しなければいけないと思います。

 子ども達が大人になって、その時流行のドラマを見て、
「確かに面白いけど、ガキのころ見たカードゲームのドラマのほうが面白かった気がする。・・・でも、ただ単に俺がガキだったからなんだろうけどね」
 と、感じてくれるかどうかはすごく重要だと思いますし、なんとかそう言わしたる、つもりで作ってはいましたが。


 デュエルマスターズ研究所。

 読み解くレベルを設定していない、むしろ徹底的にテキストを読みこなせなければゲームに勝てないぞ、という立場からのFBさんの記事は、ゲームとしての面白さを徹底的に押し広めようとする真摯な意思なのだと改めて感じました。

 本物を常に提供し続けることは決して簡単なことではないと思います。そのことを認識することすら簡単にできることではありません。
 だけどあえてそれにこだわり続けようとし、実践し続けているFBさんには頭が下がる思いです。その上、相手が子どもたちならばなおさらのことでしょう。

「子どもたちよ、【デスフェニックス】はそんなに強くないぞ」、とある意味商売抜き(?)で発言されるFBさんの記事を今後も楽しく拝見させていただきます。

 お忙しい中、ご丁寧に返信いただき、ありがとうございました。

K・N

P.S.【デクロワゾー】=【牙】ですか。【デクロワゾー】=【猿神兵アッシュ】、【牙】=【猿神兵アッシュ】は使ったことありますが、なぜ、その発想に至らなかったのでしょう。参考にさせていただきます。



 池田です。
 違う立場のクリエイターの方とお話するのは、非常に良い刺激になります。楽しく読ませていただきました。

 普遍的・恒久的な“本物”は、間違いなく存在するものですね。モナ・リザしかり、ミロのヴィーナスしかり。

 映像や写真などは特に、いつも誰もが見ている“視覚”を切り取って見せるのですから、センスが卓絶していないと、感動を与えることは難しいと思います。
 ロバート・キャパの“崩れ落ちる兵士”を見たときは、鳥肌が立ちました。

 それを踏まえて、「踊る〜より、ナバロンの方が〜」のご意見、
 全くその通りだと思うのですが、以前、僕にも同じようなことがあったので、お話しておきたいと思います。


 僕は以前、遊戯王カードゲームが大嫌いでした。
 マジック・ザ・ギャザリングという、競技性の高いカードゲームからこの世界に入った僕にとって、数値的に何のバランスも取らず、コストも無く、タダ単に強いカードを多く持っている方が勝ちという遊戯王は、カードゲームブームに便乗しただけの、ひどい商品に思われたのです。
 こんな物が流行れば、せっかくマジックが生み出した、“トレーディング・カードゲーム”という文化そのものが破壊される。
 子供たちも、遊びの中で「リスクとリターンを計算して、勝負する」という事を学べず、「金を出したもの勝ち(レアカード持ってる者勝ち)」という間違った観念を植え付けられてしまう。

 物凄い危機感を抱いた僕は、フューチャービー徳島店を作った際、徹底的に遊戯王をこき下ろす営業を続けました。

 遊戯王を買いに来た人に、いかに遊戯王が間違ったゲームか説明したり(今思うと赤面のいたりです)、周りの店が遊戯王シングル販売で暴利をむさぼっていたのに対し(100円で買って2000円で売る)、商売抜きで価格破壊を仕掛けたり(当時の徳島の平均価格の3分の1まで落としました。むろん儲けはありません。価格で対抗できなくなった店が、遊戯王を取り扱うのを辞めれば良いと考えていました)、今考えると無茶苦茶でした。

 今では考えられないことですが、その結果、子供たちは「安いから」という理由で当店に来ても、買うだけ買ったらすぐに、逃げ出すように店を出るようになっていました。
 自分たちが大好きな遊戯王の悪口を言う店に、いたくなかったのだと思います。

 それでも当時、自分は「正しいことを言ってる」という自信があったため、そのままで2年ほど商売を続けていました。

 ある時、遊戯王の新作セットを1箱開封し、「なんだか突然、テキストが多くなったな?」と考えながら、カードを見ていると、【八汰鳥】というカードが目に付きました。
 ものすごく強力なカードだと、すぐに気づきました。はっきり、狂っていると。
「やっぱりこのゲームは、バカが作っている!」
 当時の僕は、鬼の首を取ったように思ったものです。

 そこで、この【八汰鳥】が、いかに狂ったカードか、いかに遊戯王がいい加減に作られているか、実証するために、始めてまともにデッキを組んでみる事にしました。

 デッキ完成。今まで、遊戯王を買いに来ては、すぐ逃げ出す子供達を捕まえて、対戦してみることに。

「店長さん、遊戯王嫌いだったんじゃないの?」
「嫌いだよ。だって強さのバランスが無茶苦茶だもん。遊戯王をやってない俺でも、狂ったカードがすぐにわかる、という底の浅さを実証してやる」

 ここで負けたのなら、
「あれ? おかしいな」
とか、
「結局、理屈も通じない“運”だけのゲームかよ!」
と、逆切れして終わっていたのかもしれません。
 が、結果は連戦連勝。
 他店の大会で、いつも優勝している大人の人も来ましたが、やはり全勝。
「みろ、やはり遊戯王はこんなもんだ。本気になるだけバカバカしいな」
と、ますます見下すようになりました。

 しかし、振り返ってみればこのときすでに、「自分の理論が実証される」という、僕がもっともカードゲームに魅力を感じている部分が遊戯王にもある、と、認めていたのかもしれません。

「【八汰鳥】が強いのは分かった。では俺は、俺自身の生み出したこのデッキに勝てるのだろうか?」
 勝てるデッキが作れないなら、そこで終わっていました。
 作れてしまいました。【八汰鳥】に五分五分で戦え、しかも汎用性の高いデッキが。

 こうなると止まりません。いくつもデッキを作って、試してみたくなります。
 以前なら、遊戯王カードの知識も少なく、デッキバリエーションもすぐに底を突いていたでしょう。
 しかしその時すでに、「店長に勝つんだ!」を合言葉にやってくる、遊戯王プレイヤー達が無数に発生していました。
 おかげで、彼らから情報を集め、どんどんデッキを作っていくことができます。

 そうして遊んでいるうちに、気づいてしまったのです。
 僕はカードゲームの面白さとは、囲碁や将棋に通じるものだと考えていました。
 しかし、それは、マジックからカードゲームを始めた人間の、固定観念だったのです。
 遊戯王を遊んでいる彼らにとって、カードゲームとは、“仮面ライダー変身ベルト”だったのです。
 つまり、勝ち負けを競うゲームではなく、漫画のキャラクターになりきるための、ごっこ遊びのツール。
 まず最初は「対戦の雰囲気を楽しむ事」が目的のゲームで、勝敗やデッキ理論などは、あとから興味を持った者だけが追求するものだったのです。

 囲碁・将棋→仮面ライダー変身ベルト。
 何という違いでしょう。
 言うなれば、僕は今まで、サッカー選手に「彫刻をやれ!」と言うような、的外れなことを言っていたのです。
 大きなパラダイムシフトでした。

 とはいえ、僕がカードゲームに面白みを感じているのは、主に「理論の実証」。それは変わりません。
 しかし、その方向からアプローチしつつも、「ごっこ遊びとして」カードゲームを求める人の気持ちも、わかるようになったのは大きな収穫でした。

 おかげで今の僕がいるわけです。
 “今の子供たち”と一緒に遊んでいるおかげで、自分の価値観を、常に新しい価値観の前にさらし続けることができ、子供たちから新しさを学び、また、子供たちに古いものを伝えていく事ができる立場。
 毎日が変化と成長の連続です。

 『踊る〜』が『ナバロン』と比べ、稚拙な映画なのは、専門家から見ればそうなのかもしれません。
 しかし、『踊る〜』を見て、映像に興味を持った人が、その世界に入ってきてくれるなら、それは収穫ですし、また、『ナバロン』とは違う『踊る〜』ならではの魅力というものを発見できれば、若い人たちの視点を手に入れる事が出来るのではないでしょうか。

 そうしたなら、彼らの価値観を理解し、尊重したまま、過去から積み上げられてきた“本物”を伝える事も出来るようになるかもしれません。

 長くなってしまいましたが、僕にとっても再認識できる事が多く、とても有意義なお話ができたと思います。ありがとうございました。



 池田様

 ご丁寧なお便り、ありがとうございます。

 読んでいて、どんどん興奮してしまいました。

 お互い立場は確かに違いますが、どちらも「何かを伝える」環境にある者として、大きな責任を背負っているのだと思います。

 そのことは常に心には持っていたつもりでしたが、こうして池田さんに言葉で示されたことを読ませていただいて、僕も改めて気を引き締めなきゃいけないな、と痛感させられました。重ねて、ありがとうございます。

 今後も機会があるたびに、このようなお便りさせていただければと思います(NACさんに勝てるデッキのヒントもうかがえればと…なるべく自分で研究しますけどね〈笑〉)。

 先日、カードキングダム練馬店をぶらっとのぞきに行きました。

 いままで、新宿や秋葉原のカードショップにしか行ったことがなかったのですが、子どもがいなくて(土地柄、当たり前ですけど)、デュエルコーナーはマジックかガンダムウォーしかやってなくて(たまに遊戯王も)、寂しく思ってたのですが、練馬では子ども達がデュエルマスターズをやってました。

 うれしかったですね。店員さんと子どもたちも、なんか仲よさそうでしたし、すごくいい環境を作られているんだなあと、いい気持ちで帰りました。

 そのうち、練馬店で、子どもたちにデュエルを挑もうと思ってはいるのですが、ちょっと35歳の大人としては勇気が要りますよね。でも、なんとかそのうち…。

K・N



 K・Nさん、記事にする事を快諾いただき、まことにありがとうございました。

 カードキングダム練馬春日店は、親子連れのお客様も多く、30代の方も楽しくデュエルできる環境となっております。大体、ぼくもそうですし(笑)。
 又のご来店をお待ちしております。


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