トップカードゲーム戦記


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『こうしてカードキングダムは作られる
カードキングダム松江店、開発開始!』


 以前独り言でアルバイトを募集した、鳥取県米子市にカードキングダムを作る話ですが・・・
 今回、ちょっと条件変更の上で、新たに人材募集を告知します!
 今回のコーナーの最後で、募集条件等を明記しておりますので、まずは記事内容をお読みください。



 12月9日、羽田空港より一路、日本海側へ。ゲゲゲの鬼太郎の里、鳥取県に到 着。
 いきなり空港のみやげ物売り場に“鬼太郎ビール”なるものを見つけます。
 飲んだらいかにも愉快な酔い方をしそうです。
 角川映画“妖怪大戦争”のように妖怪が見えるようになって、肩を組んでゲゲゲのゲ。飲みすぎてゲロゲロのゲー。
 「これは帰りに買いまくるしか。飲んで吐くしか」と心に決めつつ、米子に向かいます。楽しくなってまいりました。


 なんでも、今回お話をいただいたホビーショップさんは、3年ほど前に米子で開店し、最初は良かったものの年々売り上げが下がり、ついには経営が困難になって駅前に引越し、再起をかけたもののやっぱり不振。
 最後の手段としてカードキングダムに連絡してみた・・・との事。

 「なんでウチが最後の手段やねん」とも思いますが、ご相談を受けたからにははせ参じる所存。
 とりあえずは場所と物件、町の様子とお店の在庫状況を見て、「カードキングダムになったら、生き返れるか?」を調べます。
 ここまでは、ご相談を受けるだけですから、契約金の話は出てきません。今回頂くのも交通費だけ。フランチャイズに加盟頂けない場合はただ働きです。

 変な話? そうかもしれません。本当言うと、ご相談受けるだけでも、人件費ぐらいは貰うべきなのかも知れませんが、今までずっとそうでしたから。

 ですから、僕は基本的に、ただ働きが多いんです。
 でももちろん、そんな事ができるのは、優秀なスタッフと、通信販売を含め、カードキングダムを利用してくれるお客さまたちのおかげ。
 皆さんたちが「カードゲーム業界のために働け! びしばし」とエールを送って下さっているから、そのために動いているって事ですね。宿命かも? 楽しいから良いけど。

「ふふふ。さすが日本海。空は曇っとるし風は冷たいわい。その分、カニが絶品なんだよね。じゅるじゅる。さー、不審船は紛れ込んで無いかいのぅ?」

 実は僕、同じく中国地区日本海側、島根県は浜田に住んでた事がございまして、よく港でサイレンが鳴ったんですな。不審船が近づいて来る度。

 北○鮮が近いから。

 東京に住んでると地震が身近な脅威であるように、中国地区日本海側は、北○鮮が身近な脅威なのです。マジで。
 同じ日本でも、本当に、地域によって育まれる文化は違うもの。
 それを知った上で、カードゲームという、みんなが楽しんでくれているホビーの、普遍的なサービスのノウハウを追及していきたいものです。

 さて、ケータイでE店長さんからのナビを受け、目指すホビーショップへ向かいます。
 場所は米子駅近くの商店街。
 ・・・言っちゃあ何ですが、陰々滅々たる雰囲気の商店街です。
 数えてみた所、5軒のうち4軒のシャッターが下りています。つまり、お店がないの。
 いわゆる、“シャッター商店街”。
 人々の流れが、マイカーの普及により駅前から基幹道路沿いに移動し、従来の「駅前商店街」に客が来なくなり、最終的には、郊外型のショッピングセンターの完成により止めを刺されるという、地方都市の一連の流れ。
 やはり、ここもそうでしたか。

 で、お店ですが・・・

 ご主人(E店長)手作りの什器(お店の棚など)は、かなりがんばってるし、広さ、照明の明るさも十分。構成のセンスもなかなかです。

 しかし。
 しかし、致命的に売り方がまずい。
 ただ、カードを並べ、シングルに値段を付け、ショーケースに入れているだけ。

  よろしいか。カードを並べ、シングルコーナーを作るだけならば、玩具店でも、いうなればコンビニでもできる事なのです。
 専門店なら、情報発信源でなければならない!
 お客さまも気付いていないカードの魅力を、さまざまな情報として伝え、「店に来る前より、さらにカードが好きになって御帰りいただく」!
 これが顧客満足度を充足させる、「専門店の」売り場作りなのです!!
 はあ、はあ。
 失礼。

 お店を見ながら、ほかにもなにか色々、とりとめも無く爆発しましたが、えー、つまり、そういう知識をお求めになったからこそ、カードキングダムにご連絡された訳ですよね。
 了解です。とにかく、お店は改造する必要があるでしょう。

 続いては、街を見てみる事にしましょう。
 「とりあえず、周囲を見渡せる高い所は無いですか?」ということで、案内して頂いたのが駅前百貨店。
 途中、百貨店のおもちゃ売り場があったので、のぞいてみましたが、カードゲームが見当たりません。
 「デュエルマスターズはありますか?」と聞いてみると、在庫がレジの中から出てきます。
 こりゃ、知ってる人か、わざわざ聞く人しか買えませんわ。
 一応、1パック買ってみましたが、在庫の減り具合から見て、どうやら遊戯王の方が売れている様子。
 とは言え、子供がわざわざここに買いに来るとは考えにくく、競合店とは考えられません。
 まずは警戒の必要なし。

 屋上駐車場にのぼり、寒風吹きすさぶ中、学校の位置、人の流れ、街の開発の方向性などを質問していきます。

 結論、駅前商店街では、未来無し!


 米子市も、ご他聞にもれず駅周辺より郊外に住宅地があるのですが、むしろそっちの国道沿いの方に、お店が増えています。
 今のお店は、2ヶ月ほど前に引っ越して作ったとの事ですが、以前の店は、むしろ住宅街のど真ん中にあったとの事。
 何で引っ越したかというと、家賃の問題と、競合店の玩具店が強かったからという理由。
 終わった事を考えても仕方ないのですが、どう考えても以前の場所の方が良かったような気がします。
 一応、前のお店のあった場所に行き、なぜ失敗したのかを洗い出してみる事にしました。

 以前のお店の物件は、まさに住宅地の真ん中のショッピングセンターにくっついており、駐車場は使い放題、面積は30坪近く、すぐそばには鳥取県一のマンモス中学校とマンモス小学校があるという、とんでもなく恵まれた・・・

「なんでココから出ちゃったんですか!」

「家賃が」

「いくらです?」

「○万です」

 やっ・・・・・安い!!!

 もうやだ。地方都市。物件安すぎ。
 他のお店の相談を受けるたび、聞くたびに、「むしろ俺が店を出したい!!」という好条件が多すぎます。
 残念ながらこの物件は、すでに別のお店が入っており、もはや取り戻せない状況。

 ここにいた時にカードキングダムにご相談頂けていれば・・・超!楽勝!確実に売り上げ100万円以上アップ、お客様にも大喜びしていただける、夢のようなカードキングダムができたであろうに・・・

「ここに園芸用のアーチを置いて、店の入り口に鳥居を作るんですよ。そこにはカードの拡大コピーを張って、『みんなの大好きな夢のカード空間』の入り口を演出するんです。
 祭りは“ハレの日”、非日常の異空間を作る儀式ですが、そのために鳥居をくぐるんですね。カードキングダムは単なるカードショップでは無くエンターティメントショップですから、毎日お祭り、毎日異空間であるために、入り口に鳥居の演出が必 要なんです。
 そして、そこをくぐって中に入ると、開けた視界に正に望んでいた以上の夢の空間が広がっている。
 それは何かというと、第一マグネットに置かれた新製品を立体的に演出した“祭事台”を中心とした、カード、カード、カードそのものの売り場。売り場そのものがカード曼荼羅になっているビジュアルショック。
 それこそがカードキングダムの真髄のひとつなんです」

 大変なノウハウをべらべらとしゃべっていますが、こんなのはノウハウの入り口の話だけだから平気。

 「なるほど、そうか」と理解して、その「真似」をする事はだれでも出来ます。
 が、「なぜその考えに至ったか」を考えれば、そこにフランチャイズグループの本当の価値を理解して頂けるでしょう。
 真似だけで商売できると考える人は、しょせんそこまでです。

 コロンブスが卵を立てたのを、「そんなの誰でも出来る」と言い放つ人間が多いのが、実際の話。
 「俺は卵を立てたコロンブスの発想力を評価するね」と言いながらも、実際の自分の生活では、なかなか他人の発想の斬新さに感心できなかったり、「気付かされた」自分と、「気付いた自分」の境界があいまいなのが現実です。
 僕? 僕も毎日、いろんな人に気付かされている人。だからこそ、人と話すのが楽しくて仕方ありません。

 ここをカードキングダムにするならば・・・
 夢は広がり、完成した“カードキングダム米子店”にたくさんのお客様がつめかけ、従業員が5人でもてんてこ舞い、という状況が、リアルな映像として僕の脳裏に映し出されてきた時、気がつきました。

「で、ここに戻ってくるのは無理なんですね?」

「残念ですが・・」

 ああ。

 続いて、強力な競合店との話であった、玩具店を見に行く事に。

 そのお店では、国道沿いの駐車場のある玩具店で、デュエルマスターズの大会を月に1回開いているが、何とコロコロコミックに告知されない非公認大会であるにもかかわらず、40人以上の参加者が集まるとの事。
 つまり、米子市にも、カードゲームのお客さんはいるわけです。たくさん。
 今回相談頂いたE店長のお店の大会は、コロコロコミックで告知されている公認大会なのに、にもかかわらず20人余りの参加者でした。

 この差は一体、何なのか。

 さっそく、その玩具店に入ってみました。
 カード専門店ではないからデュエルスペースはありませんが、普通におもちゃ屋さんとしての賑やかさ、商品の豊富感の演出は立派。照明も明るい。

 ですが、多分何よりも、カードゲームのお客様を引き付けているのは、あるひとつの条件でしょう。
 実際に買い物をして、少しばかりその店の店長さんと話して、確かめてみました。

 ・・・店から出て、E店長さんに報告。

「この店の店長さんは、デュエルマスターズのルールを、ちゃんとご存知です。
 これはつまり、自分の扱っている商品に対する知識を、責任を持って理解しているという事です。
 質問にも、ちゃんと丁寧に答えてくれるし、わからない事があったら、デュエルマスターズの本を見て調べてみてもくれます。
 だからこそ、お客さんは安心して買ってくれるんです。安心して遊んでくれるんです。
 わからない事があって、それが解決されないと、遊べなくなるでしょう? そうなったら無駄な買い物になるじゃないですか。
 そうならないように、『売って、おしまい』じゃなく、買った後もフォローしてくれるお店だから、人が集まってるんですよ。

こういう店がある所でなら、カードゲームは生きていけます。専門店では無いので、カードキングダムレベルとはもちろん、違いますが、それでも、お客さまの事を考えている良いお店です。
 こういうお店とは、正直なところ、戦いたくありません」

 ・・・普通、こういう話をすると、「あんた、どっちの味方だ!」と怒りそうなものですが、E店長さんは穏やかに受け止め、うなずきながら聞いてくださる。
 そして、落ち込みながらも目が死んでない。

 E店長さんは、今、生まれ変わろうとしているのだ。

 今までの失敗を、言い訳ゼロで全面的に認め、反省し、自分のすべてを一旦破壊しようとしている。
 40代でこれを行うのは、並大抵の事ではない。
 脱サラから新しい店などを開こうと、そういった学校に行く人は、まず徹底的にプライドを叩き潰され、無心にお客さまに感謝できるようになるところからスタートする。

 E店長さんは、3年間、カードショップをやって来た。そして、失敗した。
 それを全面的に認め、みっともなく言い訳したりせずに、人から学んで生まれ変わろうと、心に誓っているのだ。
 そして、カードキングダムからは、学ぶに値するものがある、僕から吸収できるものがある、と考えるからこそ、今、悔しさなどに振り回されず、無心に話を聞いているのだ。
 相手が、僕のような若輩者でも。

 僕は、その信頼に答えなければならない。

 本当の事しか、言ってはいけない。そして、言葉を濁してはいけない。駄目だった事は、何故駄目だったのか、厳しくても理解してもらう必要がある。

 実は、E店長は、もともと最初は、テレビゲームショップを作ったらしい。
 何の知識もなかったから、ネットで検索し、ゲームショップの作り方を教えてくれるショッププロデュースの会社と契約した。
 その会社は、店作りを手伝い、流通の世話をして、契約金として100万円を徴収した。
 もちろん、これは良くある商売だ。しかし、流通は上前をはねていたし、最初に店に卸したゲームソフト(これももちろん別口でお金が掛かっている)は、中古市場で余っていたもの、不良在庫であったものも多く含まれている。

 次に、テレビゲームが売れなくなってきた時には、カードゲームを扱うよう、セールスしてきた。
 これがまた酷い。
 カードゲームの仕入れは無論、その本部を通したもので、一般問屋よりむしろ高い。
 サービスとしては、月に一度か2月に一度、「シングルカードの価格表」を送ってくるだけで、雑誌広告やネット広告など一切無い。
 「シングルカードの価格表」だけだ。
 それで、1ヶ月3万5千円のフランチャイズ料金と、最初の契約金(数十万円)を巻き上げている。

 シングルカードの価格・・・そんなものは、地域によって変わってくるし、ネットで調べればいくらでも通信販売の価格表が転がっているではないか。
 当店の通販の価格表などは、むしろ全国のお店に便利に使ってもらえるように、わざと公開しているほどだ。

 「つまり、本来、無料である情報に対して毎月払い続けていた訳ですか?」

 なぜこうなるのか、考えてみる。
 汚い方法で考えると、フランチャイズは、加盟店が成長し、独自でノウハウを作れるようになってもらっては、困る。

 いつまでたっても、シングルの価格も自分では決められない、店作りも出来ない、デッキ作りやコンボも開発できない。

 このままのほうが、本部の言いなりに出来るから、いつまでも利益を吸い続ける事が出来る。

 が、こういった組織に未来はないし、加盟店にも未来は無い。
 言いなりの店に、独自で商売を拡大する力は身につかないし、本部は本部で十分に血を吸い、その業界が傾きだしたら、とっとと別の儲かりそうな業界で新しい組織を作るだけだ。

 自分の扱っている物を自分で理解しようとしない事は、こうした恐ろしい結果をもたらす。流されるだけ、利用されるだけで、終わる。

 だからカードキングダムは、カードゲームの好きな人にお店をやってもらう。
 そして、成長していける器を作り、むしろ本部である僕たちのライバルになれるようなって欲しいと思っている。
 成長していくフランチャイズグループとは、こうしたものだ。
 加盟店もお客さまだが、同時に、ともに成長する同志でなければならない。

“おでん”を最初に置いたコンビニは、セブンイレブンだと聞く。
 それまでは、コンビニに匂いのするものを置くのはご法度だった。
 が、どこかのセブンイレブンで実験的にやってみて、好評だったから、全店で取り入れた。
 コンビニエンスストアは色々あるが、日本におけるパイオニアであり、最初期からありながら、今もトップを走っているのがセブンイレブンだ。
 本当のフランチャイズとはこういうもので、加盟店に対する教育熱心さ、革新性は他の追随を許さない。

 加盟店に、「このとおりシングル価格をつけて下さいねー」と教えるだけで、「なぜこの価格になるのか」と言うノウハウを教えないフランチャイズは、加盟店を成長させずに血を吸い続ける事だけを考えた、まるで吸血鬼ではないか。僕はそう思 う。

 カードキングダムに入って下さった、とある店の店長さんが仰った。

「カードキングダムに入って1ヶ月たった時、自分たちでシングル価格を付けられるようになった時、ふと思ってしまったんです。『もしかして、本部はいらないんじゃないか?』と。でも、掲示板(カードキングダム関係者のみ閲覧できる、情報交換の場)を見て気がつきました。自分だけじゃないから、仲間がいるからやっていけるんだ、と」

 涙が出るような、うれしい話だ。こういう事に気付いてくれる方が、カードキングダムの仲間でいる事に、誇りを感じる。
 また、1ヶ月でシングルの価格が決められるようなお店、そういう“器”を作る事が出来たのも、とりあえず誇っても良いノウハウだと思うし、そうやって成長できる人が店員だった事も、ありがたい事だ。

「結局は、人ですね」

 誰も彼もが、どんな仕事でも行き着く答えが、この店でも見えてきた。カードゲームが好きで、子供、大人、両方と楽しくゲームできる人材。そういった人が、最低2・3人は必要だ。

 が・・・
 駅前商店街のお店に戻ってきて、やはり思う。ここでは、いくらなんでも勝算は無いんじゃないかと。

 デュエルスペースで、2組のご家族がお待ちだった。僕が来る、と聞いて、わざわざ来て下さったらしい。お子さまとデュエルマスターズを楽しんでおられるお父さま方だ。
小一時間ほど談話しているうちに、気になる言葉が出てくる。

「ここのご主人のお店は、正直、前の場所が良かったので惜しいんですよね」

「ああ、やはり。僕もそう思いました」

「松江の方の店も惜しいですね」

「そうなんだよなぁ」

 はて? 松江?

 松江とは、隣の県、島根県の県庁所在地だ。
 そこにもお店があるのか? ここの店長さんの店? いや、ここは奥さんと2人で営業してる店だし、もう1軒店を維持するのは無理なのではないか?

 なにかの聞き間違いか、関係ない店だろうと思いつつ、デュエルマスターズの話に戻り、その後お父さま方は帰られた。

 さて・・・結論として、
○競合店は立派な好感度の高いお店だから、戦いたくない。
○以前の物件より、明らかに後退している。
○大きなテコ入れを行うにも、資金が無い。
 等、マイナス要因が多く、正直、カードキングダムに入ってもらっても、いくらなんでもこの場所では、目に見えるほどの影響は難しいだろう、と判断せざるを得なかった。

「カードキングダムに入って頂けば、売り場を手直しし、良い売り方のノウハウをご提供して、売り上げを伸ばす事は出来ます。
 しかし、その、伸ばせる割合そのものが小さすぎます。加盟金を頂いて、その元を取るほどの効果をお約束できる場所ではありません。
 入って頂くからには、得して頂きたい。しかし、このレベルでちょっと売り上げが上がるからと言って、加盟金を頂くわけにはいきませんね」

 すごく悔しい決断だった。わざわざ東京から鳥取に来たからには、「カードキングダムになったら、どんな店でも立ち直る、という事を実証してみせるぜ!」という気概だったのだが、駄目なものは駄目。
 無責任に「こりゃいけまっせ!」と言うわけにもいかず・・・

「残念ですが、この話は無かった事に・・・」
と出口に向かったところで、ひとつ引っ掛かりが。「ところで奥さん」と玄関で振 り返る刑事・コロンボの如く。

「ところで店長・・・松江の店って、何です?」

 ここから話は急展開。
 松江には、巨大ショッピングセンター“サティ”があり、そのすぐそばで、店長のご友人が「倉庫として」借りている物件があるとの事。
 本来はお店用の物件で、見た目はとてもきれい。入り口はガラス張りで、開いているスペースに、レンタルショーケースを置き、土曜・日曜だけお店として「一応」開けているそうな。

 そして、そこの開いているスペースで、時々、シングルカードだけのお店をやっているとのこと。

「何でそれを先に言わないんですか!!!!」

 巨大ショッピングセンターの側のカードショップ。これは願っても無い理想形の一つだ。
 どう考えても、いや、カードキングダムであろうが無かろうが、確実絶対な勝算がある。

 前の店を潰した時、なぜそっちに引っ越さなかったのか、それは、荷物が多かったからだと店長さんは答えた。
 が、実際問題、荷物のほとんどは売れ残りのフィギュア類ばかり(これも件のフランチャイズから紹介された物)。はっきり言って、永遠に売れるはずの無い、ゴミばかりだ。

「勇気を出して、全部捨てましょう。持っていても、本当に何にもなりません。タダでもらっても、いらない物ばかりですよ。
 今の状況をはっきり言えば、ゴミを保管する場所に、わざわざ家賃を払っているようなものです」

「そうですね・・・ここは決断すべきでしょう!」

 そして、“ゴミ”・・プレイステーションのソフト(プレステ2でなくて!)、2・3年前のキャラクターフィギュア、UFOキャッチャーの景品・・を除いていくと、何と、生き残っている商品は、本当にカードゲームだけになってしまいました。

「これだけの量であれば、松江の店には入りますか?」

「十分入ります」

「カードキングダムは、実は最低、5坪ぐらいで作れます。そこは何坪ぐらい借りられますか?」

「10坪は使えると思います」

「十分ですね。では、いまさらですが、シングルカードの在庫をチェックさせて頂きます」

 そして調べてみると・・・宝の山!!
 なんと、ガンダムウォー、デュエルマスターズ、遊戯王のカードが、最初の弾からほぼフルコンプリート!!
 新しくカードショップを開くとき、本当なら一番用意するのが大変な、シングルカード在庫が、現在ではとても望めないほどに超充実!

 まがりなりにも3年間、カードショップをやってきて、買取をコツコツ続けてきた結果でしょうか。
 危うく、このとんでもない宝を抱いたまま、潰れてしまうところでした。

「店長・・これ・・凄いですよ。あのねえ、もし潰れるとしても、その前に絶対連絡してくださいよ。これ全部で間違いなく、50万円は出して買い取ります!」

「そんなにしますか?!」

 するったらする。
 店長さんは、静かに燃え始めた。


 そして次の日。
 名古屋に向かう電車の中で僕の携帯が鳴った。電車だから普通なら切るけど、E店長からだ。電車から急いで降りて、かけ直す。

「どうでした?!」

「大丈夫でした。友人が、あの場所にちゃんとした店を出してもいいと、言ってくれました!」

「良し、では、ゴミを全部捨てて身軽になって、カード1本に絞ったしっかりした店を作りましょう! 小さくなっても、むしろ売り上げは上がるでしょう。
 第1段階目標額、月商200万です。
 まずは人を集めましょう。手伝ってくれる、カードゲームの大好きな仲間を。
 カードキングダムに加盟して頂くのは・・・とりあえずは仮契約で結構。本契約は、売り上げが、ある程度取れるようになってからで結構です。それまでは必要経費だけでお手伝いします!」

「そんな条件で良いんですか? 池田さんに何の得があるんです?!」

 決まってる。人材さえ揃えば、この店は成功する。そう信じてるからだ。
 そして、成功するのが間違いないのなら、カードキングダムになってもらえるのが、これまた間違いないからだ。

 あ・・・鬼太郎ビール買うの忘れた。



 と、言うわけで、
 “カードキングダム・島根県・松江店”のメンバーを募集します!

 勤務先・島根県松江市東朝日町627−3
 ラポート グッドチャンス内

 高校生以上、時給750円
 大学生以上 時給800円

 島根県松江市の平均からすれば、かなり高額です。
 が、その分、誰でも出来る仕事ではありません!!

 カードゲームが好きで、ちゃんとルールを知っていて、カード整理ができる事・・・って、ここを読んでいる人達にとっては楽勝ですかそうですか。

 ふふふ。しかし、仕事はきついぞ! 平日はカード整理、休日ともなれば、お客さま相手にカードを売って買って、子供相手に一日中デュエルしてデュエルしてデッキを回し続けるのだぁ!!

 何っ?! 望むところだと?!

 そういやそうか。楽しいよな。
 楽しい事、好きな事をやって、お金がもらえる・・夢のような話だし、そんなウマイ話があるはず無かろうと思うが、実際そうなんだから、仕方ない。
 カード整理が延々続くときには、正直疲れる時もあるが、仲間と一緒にカード整理をしながら、カードを見てて気付いた馬鹿話をしたりするのは、実に楽しいものだ。
 そして、カードに触れる時間が長いほどに、強く、より楽しむ事が出来るようになっていく。

 島根県松江市の諸君!
 ぜひ、皆さんの力を貸してもらいたい!


 そしてもう一つ。

 東京都・練馬春日店では、正社員を1名、募集中です。
 カードゲームが好き、そして、ホームページの運営が出来るノウハウを持っている事。
 それ以外は話を進めていく上で、判断していきます。

 実は当社(有)遊縁は、社会保険も住宅手当もある、拍子抜けするほどしっかりした普通の会社ですが、カードゲームに対する熱いパトスと、問題意識の高さを持つ、稀有な人材を求めています。
 できれば、社長・池田と喧嘩の出来るような人材(わしはマゾか)を求めます。
 (正社員募集は18歳以上です)

 島根県松江店と東京都練馬春日店についての問い合わせ・募集受付は、練馬春日店で行います。


○カードキングダム練馬春日(島根・松江店アルバイト受付&東京・練馬春日店社員受付)
 電話・03-3926-1866(14時〜22時)
 メール・info@cardkingdom.jp

○名前・年齢・住所・電話番号(出来れば携帯)
○アルバイト希望店(松江・練馬)
○好きなゲーム
を伝えてほしい。

 近日中に、僕(いけっち店長)が直接、電話して、話を進める。
 だいじょうぶ。怖くないのよ。やさしくするから。
 じゃあ、頼むぞ! マジな話、松江店は、人が集まらないと開店できないしな!


 また、茨城県水戸店(カードキングダム水戸普玄堂店)もバイトを募集中です。
 直接、普玄堂へご連絡を送りください。

(今回の募集内容は、2005年12月24日現在のものです)


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