|
ドラゴンドライブTCG
新規参入者編
このゲームは、同名のマンガ・アニメとのメディアミックスで作られたもので
あり、となると我々ショップとしてはそちらからの新規参入者を期待したいもので
す。
ドラゴンドライブ(以下DD)はマンガ掲載雑誌『月刊ジャンプ』などにプロ
モーションカードを付けることでそれを行おうとしているようですが、実はこれが逆
効果になりかねません。
問題点は2つです。
1つ目は、そのプロモーションカードが強過ぎるこ
と。
どれくらい強いかはトーナメント編で後述しますが、現在のカードプール内で
は『持たざるものが持つものに勝つのは不可能』と断言で
きるレベルです。
2つ目の問題点は、プロモーションカードはメーカー公式大会では使用不可能
なのですが、そのことがオフィシャルホームページでしか明記され
ていないこと。
スターター付属のルールや雑誌、カード自体にすらそんなことは一言も書かれ
ていません。
なので、当店の大会では参加者のほとんどがそのカード達を使用していまし
た。
つまり、子供たち同士のゲームではそのカードを持っていないと勝負になら
ず、ネットユーザーとの対戦になるといきなりそのカードが使えないと言われてしま
う。
この現状、あまりにもマンガからの新規参入者に厳しいと言えませんか?
さて、それでもゲームを始めてくれる人たちもいます。
そういう人たはやはりマンガから入ってきた以上、マンガの一場面のような
ゲーム展開を望んでいるようです。
実際『デュエルファイター刃』や『デュエルマスターズ』、『遊戯王』で活躍
したキーカードはいきなり売れ行きがアップしました。
ではDDは?
まずマンガの主人公たちがエンチャントのような形でカード化されています。
が、これはプロモカードでメーカー公式大会では使用不可ですし、
チャンスを逃してしまったら二度と手に入りません。
次に主人公たちが操るドラゴン。これは普通にカード化されています。が、こ
れはほぼ全部がレア以上。こちらもそうそう手に入りませ
ん。
もちろんガンダムウォーのような、名シーンをカードで再現といったものも
まったくありません。
この2つの要素が合わさった結果、このゲームはデュエルスペースでやってい
るのを見てもアニメやマンガのDDと同じ世界のゲームとは気付かない、実に引きの
弱いものになってしまっています。
トーナメントプレイ編
大会に参加して楽しめるゲームか否か、これは売る方にとって大事な問題で
す。
ゲームの要素が加わることでコレクターの基準とは違うトレードやシングルの
需要が生まれ、また自分とは違うカードの使い方を見ることで商品自体の寿命が伸び
ることになります。
さて、DDは?
まずはカードレイアウト。
はっきり言って見辛いです。
このゲームでのメイン、つまり1番のウリはドラゴンですが、このドラゴン
カードが特に見辛い。
まずは枠の色。
このゲームではドラゴンを自身と同じ色の属性コストとしても使えるのです
が、これがなぜか枠の下半分しか色がついていないので
パッと見では解りづらいです。
次はレベル。
これはドラゴンのHP&ドラゴン召還コスト&相手の勝利ポイントとなるゲー
ム上の重要ポイントですが、これまた小さく見辛いです。
最後がゲノムコード。
これはエンチャントクリーチャーを付けるのに必要な情報なのですが、この
フォントがシャレにならないくらい小さい。具体的にいうとカード
1枚1枚に書かれているコレクション用の通しナンバーよりも見辛いくらい
。
バンダイは子供の目を悪くさせようとしているのか?と疑ったぐらいです。
では、次。
実際のゲーム展開ですが、ターン進行がかなりわけがわかりません。
マジック用語で説明すると、
●先攻、ドロー、セットランド、フェイズ終了
○後攻、ドロー、セットランド、フェイズ終了
●先攻、ドラゴン召還、フェイズ終了
○後攻、ドラゴン召還、フェイズ終了
●お互いインスタントを使用、戦闘
ダメージを与えたプレイヤーが次に先攻。
と、こういう展開をします。なぜかほぼ無意味に先攻と後攻を、ターン中なのに交
互に入れ替えるのです。
大会での様子を見てみましたが、これキッチリできている小学生見た事ありま
せん。みんなスターター付属の説明書は読んでいるのに理解できてはいないのです。
最後はゲームバランスです。
現在のところ唯一DDのコンボやテクニックの紹介が載っているのが『ゲーム
ぎゃざ』ですが、内容は『高レベルのドラゴンをいかに早く場に出すか』というのが
多いです。
これはゲームシステム上レベルがでかい奴はHPがでかく、またデザイン上で
も攻撃力防御力が大きくされている、つまり純粋に強いのでそういった記事になって
いると思われます。
実際カードリストをじっくり眺めてみたところ、相手にでかい奴を出されると
なかなか抵抗できません(つまり、ドラゴンに比べると呪文が弱いんです)。
呪文ででかいドラゴンに対抗できないなら、ドラゴン自身のスキル(特殊能
力)ではどうでしょうか?
これも望み薄です。なぜなら、スキルはコイントスに成功しないと発動しない
ですし、使うのにコスト(このゲームではエレメンタルパワーと呼ばれます)が必要
なので何度も使えないのです。
そもそもコイントスってのがどうなんでしょう?
一般的な「ゲームで嫌われること」の1つに、カウンターされるというのがあ
ります。つまりプレイヤーは自分の行動が無駄で終るのが嫌いなんです。
そしてDD
ではほぼ全てのスキルにコイントスでの成功が必要とされます。自分の行動が無駄に終わるのが嫌われるのに、それを頼らなければならない。これでは安定した戦術を確立できず、フラストレーションが溜まる物となってしまいます。
ちなみに同じくコインを使うゲームとしてポケモンがありますが、こちらでは
基本的には一部の強力な技でしかコイン判定を使いません。
さて、先で呪文が弱いと書きました。が、何事にも例外があり、このゲームで
もかなり強い呪文があります。
それはカウンター。
スキルをカウンターする呪文は、ゲームをひっくり返せるようなスキルよりも
コストがはるかに軽く、おまけにコイントスもいりません。
カードゲームで一番嫌われる要素が一番強くデザインされて
いるのです。
以上のことをまとめると、このゲームは「相手よりデカイの
を出してしまえばあとはヤバイのだけカウンターすれば勝ててしまえる代物」
ということになります(さらにヒドイことに、このゲーム
最大のドラゴンはプロモカードです)。
ここで「デカイと場に出しづらいのでは?」と思われるかもしれませんが、い
いえコレが全然簡単です。
このゲームでは『場に出せるのはダメージ置き場に置かれた自分のドラゴンの合計レベル+1レ
ベルまで』という制約がありまして、ゲームぎゃざでは様々なカードコンボを使うこ
とでこれを無視してでかいドラゴンを出す方法が紹介されていますが、実はもっと簡
単な方法があります。
このゲームは戦闘でお互いのドラゴンの数値を比べ合いますが、この時ドラゴンを出せていなかったプレイヤーは、本体がダメージを食らったものとして手札のドラゴン
をダメージ置き場に置かなければなりません。
その時手札にドラゴンがいなければ手札を全部捨ててデッキから6枚ドロー、
そこから選んでダメージ置き場に起きます。ここでもなければこれの繰り返し。
ここがポイント。ダメージ置き場に置くドラゴンをデカイのにすれば、次のターンには『場に出せるのはダメージ置き場に置かれた自分のドラゴンの合計レベル+1レ
ベルまで』という召喚条件が満たせるので超巨大ドラゴンが簡単に出せてしまうのです。
わざわざ難しいコンボを組む必要がない、ルールを逆手に取ったこのテクニッ
ク。ゲームがつまらなくなるだけなので早く改善して欲しいものです。
長々と書いてきましたが、まとめてみましょう。
つまりは、ややっこしいルールをなんとか覚えて町の大会に
出てみると、2ターン目にプロモで場を制圧され、抵抗しようとするとカウンターで
叩き落される。
なんとか今からがんばってプロモを手に入れたとしても、メーカー公式大会で
は使用禁止といわれてしまう。
・・・。デキが悪かった頃の、2年前までの遊戯王を彷彿とさせてくれます
ね。いや、コストというルールが増えているので、憶えづらさの点を入れるとあの頃
の遊戯王以下のゲームかもしれません。
改善点
もう一度良くないポイントを並べてみましょう。
1・マンガを知っている人が見ても、同じ世界を基にしたゲー
ムだとわかりづらい。
2・ゲームで重要な情報が見づらい
3・ターン進行がわかりにくい
4・でかいドラゴンに対抗できない
5・でかいのはレアかプロモだ
逆にこのゲームの良いポイントはなんでしょう?
まずはメディアミックスで知名度があること。
もう1つはコストの払い方が独特で面白いこと。しかし現状では「コストを使
う時はカウンターを撃つ時のみ」なので、全然長所が生かせていませんが。
とにかく現状ではタダのクソゲーなので、長所を伸ばして短所を削る方法を考
えてみたいと思います。
1・強い呪文を出す
このゲームに関しては強くて手軽な呪文を出しすぎるのはあまり良くないと思
います。
つまり軽いコストで直接ドラゴンを除去できる呪文を作ってしまった場合、
ゲーム展開はお互いの除去合戦となってしまい、プレイヤーがこのゲームに期待して
いるだろうドラゴン同士の戦いがないがしろにされてしまうでしょう。主役はあくま
でドラゴンであるべきです。
そこで、効率的なドラゴン強化呪文はどうでしょう?
たとえば、マジックのクリーチャー戦では【巨大化】を使えば2コストぐらい
重いクリーチャーなら一方的に殺してくれます。言い方を変えるならば、この類の
カードが強ければ小さいドラゴン(安い)をガンガン強化してレア(高い)に対抗す
るデッキが組めるわけです。
様々なゲームでこの手のデッキが開発されていますが、これらはたいてい値段
が安くプレイも簡単なので、経験者が普及用にデッキごとプレゼントに使って、結果プレイ
ヤーを増やしてくれるという効果も期待できます。
現状のDDにも強化カードはありますが「レベルが1つ上のドラゴンを倒せる
かどうか」ぐらいの強さのカードがほとんどで、正直あまり役には立ちません。
2・ドラゴンのスキルの使い勝手を良くする
現状でのドラゴンのスキルは、ほとんどがコスト+コイン判定の形を取ってお
り、つまりは2回に1回しか成功しません。失敗したら払ったコストはドブに捨てた
も同然、これではあまり戦術的に頼れません。
となるとみんなココ一番に一気につぎ込むようなプレイになりますが、すると
場にコストが10枚ぐらい並び、そこにレイアウトの悪さが重なって、対戦相手のコ
ストに何が並んでいるのか見づらくてしかたありません。
ここは1つ、簡単なスキルはコインなしでコストを払うだけ、としたほうが良
いでしょう。
ショボイ効果でわざわざコインを使うよりも、ココ一番の大技でしか使わない
ほうが緊張感が高まりまし、コストだけで確実に成功となれば今まで以上にポンポン
とスキルが使われて場が流動する、テンポのよいゲーム展開になるでしょう。
3・バンガードルールを採用する
マジックの遊び方で「バンガード」というのがあります。
これは最初から自分の場に影響を与えるカードを出している状態でプレイする
というもので、例えばスタート時の手札やライフの増減や、『自分のクリーチャーは召喚酔いに影響
されない』などの特別な効果が最初から起きている状態でプレイすることになります。 最近のTCGで言うと『ギルティギアX』に近い形でしょうか。
つまりDDもマンガやアニメのキャラをバンガードとして使うのです。
これならばマンガしか知らない人でもプレイ風景を見ただけでDDのカード
ゲーム版だとわかるでしょう。
また、ゲーム性にも変化を出しやすくなります。
今まではコストを無制限に並べれましたが、たとえばこれに制限をつけるバン
ガードはどうでしょうか?
例として「ドラゴンのパワーを強化するが、代償としてコストを3枚しか置け
ない」といったバンガードを作るとします。すると、これを使った初心者はコストの並
べ方にあまり頭を悩ませずにすみ、結果ゲーム中の情報が減ることでDDに慣れやす
くなるでしょう。
さらにある程度の枚数制限は、コストを破棄するか、今まで置いたコストを使わないと新し
いのが置けないという状況をつくれます。これにより「もったいないからとりあえず
コストを使っておくか」的な状況がおこり、結果ゲームが停滞することなく動いてテ
ンポのよさが生まれますし、純粋に無制限に並べられるよりも相手の場が見やすな
り、結果プレイしやすいものとなるでしょう。
また属性ごとを強化するバンガードも良いでしょう。
現状では属性を揃える必要性がほぼありません。属性がゲームに関係するのは、ゲーム的に弱いスキルや呪文を使う時だけであって、ゲーム的に強力なでかいドラゴンを出すのにはまったく関係ありません。
逆に言うと強いカード(=でかいドラゴン)はどんなデッキにでも入るという
ことであり、これではトレードが成り立ちませんし、カードが揃ってくるとデッキの
中身はみんな同じということになってしまうでしょう。
しかし属性ごとを強化するバンガードを出すことでその数だけ強いドラゴンが
いることになり、結果トレードやシングルの活発化を狙えます。
また新しいバンガードを出すたびに昔のカードの再評価が積極的に行われるよ
うになり、そのたびに古いセットにもお金を落としてくれます。
どうでしょうか? 以上の改善点は「このゲームの特徴であるコストシステム
をもっと強調しよう」という狙いで提案してみました。
このゲームのコストシステムは独特で面白いのですが、アメ(使った見返り)
とムチ(ある程度の制限)がうまく調整されていないので、実際のプレイにはうまく
反映されておりません。
しかし、これらの改善を行うことで「大きな呪文を使うために、適当なスキル
を使ってコストの属性を調節しとこう」とか、それを見て「む、なにか狙っている?
では敢えてこのスキルを使って相手に揺さぶりを掛けてみるか?」とかの、相手の
残りコストを見て行動を判断する、例えば将棋での相手の持ち駒から次の行動を判断
するような駆け引きが展開できるようになると思います。
そうそう、
4・ターンの進行とカードレイアウトをもっとわかりやすく
も当然の必須事項でしょう。
おまけ
講談社&バンダイはDDにかなり期待しているようで、アニメが終りそうなこ
の時期でも雑誌などで押し続けています。
なので、今月発売になったそれら関連商品をちょっとレビューしてみましょ
う。
『月刊ジャンプ4月号』
3ヶ月連続で付録にプロモが付いてきます。
はっきり言って前号の【真龍】はゲームを終わらせたといっても過言でないほ
どのパワーカードでしたが、今号のもそこまでいかないまでも超強力。製品版ドラゴ
ンでは足元にも及ばない強さです。
しかし、今号では公式大会案内のページに「今号のプロモは使用できない」と
わかりやすく明記されました。前号までは「使えない」との明記はなかったので、こ
れは進歩だと思います。
メーカーの大会で使えないプロモ作るぐらいなら、最初っから絵違い程度にし
とけとも思いますが。
『ドラゴンドライブスターターブック』
・構築済みデッキ
・解説マンガ付きルールブック
・現在発売中のカードのリスト
・今月発売の最新弾の写真入りリスト
・プレイマット
これだけ付いてきて1000円でおつりがくる脅威の商品。おまけに書籍扱い
なので普通の本屋で買えます。
中身の構築デッキは、今までの弱点を補強するよう主役キャラ&ドラゴンを
しっかりカード化。メタゲームを変化させる強力なカード(といっても以前あったプ
ロモを公式でも使用できるようにしただけですが)も入っているので販売力もバッチ
リです。
こんな素敵な関連商品をみてしまうと、まるでDDが面白いかのような錯覚を
受けてしまいますね。
『ドラゴンドライブ第6巻』
マンガの単行本です。
この巻では街1つを一撃で吹き飛ばす【ダイナモスパーク】という強力なドラ
ゴンが登場するのですが、こいつ実際のゲームデータではレベル2のタダのザコ。
なんかどっかでメディアミックスが噛み合ってないんではないでしょうか?
ドラゴンドライブ、その後
以上の文章は03年3月に書かれたものです。現在(03年9月)では状況が少し変化しました。
まず、すべての大会でプロモカードが禁止となりました。これで、始めた時期の関係で雑誌が買えなかった人(最強カード【神竜】は月刊ジャンプの付録でした)には手が出しやすくなたと言えます。
次は、その後さらにカードのレアリティが上がったこと。最上級レアの枚数が増えた&でかいカードは当然最上級レアの2要素コンボにより、これを書いたとき以上に「お金を使ったものが勝つゲーム」になってしまいました。
またその後の月刊ジャンプでも、プロモ4種類のうちどれか1枚付きという凄いことをやり、お金のかかる具合はどんどんアップしてしまいました。
実はこのゲーム、プロモ版【神竜】さえ集めてしまえば、後はアンコモンぐらいで充分勝てるデッキが作れました。というか実は実体験なのですが、この文章を書くためにドラゴンドライブを始めた時の月刊ジャンプのおまけがちょうど【神竜】だったため、ものすごく安く、3000円程度でデッキが組めてしまいました。
いや、運が良かったです。今の状況で勝てるデッキを作ろうとしたら確実に万は超えるでしょう。
今はそんな状態のため、プレイヤー&コレクター共にほぼ絶滅。今は皆違うゲームをやっています。
【戻る】
|