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お母様 VS カードゲーム 中編
「やはり、一番子供の事を大切に考えているお母様方に『良い物だ』と認めて頂いてこそ、カードゲームがより広く、長く楽しめる物になるのでは?」と考え始めた僕でしたが、なかなか世のお母様方と意見交換できる機会はございません。
いよいよPTAにでも相談に行くか、と思っていた矢先。
カードゲームに問題意識をお持ちのお母様から、ご意見のメールを頂きました。
池田店長さん、初めまして。
カードゲーム(デュエルマスターズ)に夢中な中1の長男と、夢中というほどでもないけれど、かなり好きな小4の次男を持つ母親です。
長男は2年前に始めてから、目が覚めている時間のほとんどをカードを触って過ごしています。そこそこ強くなり、勉強も運動も中の下程度で目立たない子ですが、今や、カードゲームが自信の源というか、生き甲斐のようになっています。
いつ飽きるかいつ飽きるかと見ているのですが、今のところ当分熱が冷めそうにありません。
これ以外にもメリットはいくつかあります。
ですがメリットがあっても、私はカードゲームにはやはり疑問があるのです。
店長さんのサイトを拝見していますと、カードゲームのことを真剣に考えていらっしゃるのがわかります。なので、私の疑問にお答えをいただけるのではないかと考えて、こんなに長いメールを送りしている次第です。
☆☆☆☆☆☆
まず、中身の見えないパックで売るということが、そもそもメーカーの悪質さ(欲しいカードが手に入るまで買い続けて、お小遣いを巻き上げられ、要らないカードはゴミになる)を表しているようでいやだったのですが、この点はシングルカードを売るというカードショップの方々のご努力でまあ、いくらかは解消されつつあるようです。
次に、せっかくお小遣いを注ぎ込んで満足のいくデッキを完成させても、そのうちに新しいバージョン(第○弾というあれ)が発売され、それまでのデッキを再構築しなくてはならない。
なかには、デュエルマスターズでいえば、「トリプルブレイカー」とか「クルーブレイカー」
「サバイバー」などという不良品(すみません、ちょっとかじっただけの私の主観です)も混ざっていたようですが。
囲碁や将棋では、あとからより強い駒、特殊能力を持つ石などが売られることはありません。
その点、カードゲームは、次々メーカーが新しいカードを売り出し、カードのネタが切れたらそこで行き詰まり、飽きられてオワリ、ということにはならないのでしょうか?
まあ、子供のおもちゃなんて、買って遊び尽くせば卒業するわけで、それと同じサ、とメーカー側はもしかしたら言われるのかもしれませんが、そこまでに費やすお金(カード代、交通費などをひっくるめて)と時間、エネルギーを考えますと、ただのオモチャの域を越えている気がします。
さらに頭に来るのが(だんだん血が上ってきています)、使われているうちに飛び抜けて有効で、ゲームのバランスを崩すとわかってきたようなカードは、後から制限されるという点です。
いくつかのカードゲームにあるようですが、デュエマスの場合それを正直に「制限」と言わずに「殿堂入り」とかいうアホらしいネーミングで呼んでいます。
頑張ってリーフを集めていた子ども達を馬鹿にしていませんか。
もっと真面目にカードを作りなさいっ!とメーカーさんを一喝したくなってしまいます。
ほんっとにポリシーが無いとしか言いようがなくないですか?
☆☆☆☆☆☆☆
これらのことを、うちの子供たちに話しますと「でも面白いんだからいいじゃない」と言います。
だけど、子供はそう思うかもしれないけれど、大人の目から見るとちょっと、いえ、かなり変では???という気がしてならないのですが。
他にも、例えば、前出のシングルカードにしても、1枚2000円とか3000円とか、まあ、バックを20買ってもBOXで買っても入手できないかもしれないなら、リーズナブルなのかもしれませんが、子供のお小遣いの範囲を超えています。
結果、友達のカードを盗むという現象も起こります。
テレビゲームよりは目や頭に良いかなと許しつつ、作り手の姿勢としてはカードゲームのほうが悪質に見えてしかたありません。
店長さんを初め、カードゲーム愛好家のオトナの方々はこれらのことについて、どうお考えなのでしょうか?
うっぷんをぶちまけたようになってしまい恐縮ですが、カードで遊んでいる子ども達を見るたびに以上のような点が頭にちらついてしまいます。
長いので最後まで読んでいただけないかもしれないと思いつつ。
全く急ぎませんが、いつの日かご意見をお聞かせいただければとちょっと期待したりもしつつ。
これで終わります。
長男はフューチャービー徳島のサイトの大ファンで、毎日見ています。
これからもお元気で、楽しい情報の発信頑張って下さい。
Rさん・主婦
池田店長様
今朝メールをお送りしたあと、考えていたのですが、書き足りない点がありましたの
で、続きを送ります。
・・・ヘキヘキされるかもしれませんね。
私はカードゲームそのものは別に大して悪いものだとは思いません。私も子どもと対
戦したことがあり、これならハマるのも道理だなと感じた部分もあります。
ただ、あくまで売り手のやり方に問題があると思います。
まず、先ほどもちょっと書きましたが、カードの価格。
キラだのレアだのプロモだのと差をつける必然性がどこにあるのでしょう?
ボルメテウスでもボルバルザークでもデーモンハンドでもホーリースパークでも、すべて一律30円で売ればよいと思います。
それでデッキひと組1200円。安くはありませんが、まあ妥当かと。
ルール自体は変更しないのですから、面白さは同じでは??
他人が持っていない珍しいカードを持ちたい、高価なカードを持ちたいという、自慢したい気持ち、優越感を持ちたい気持ちを育むところが、どうも健全とは思えません。
しかも、努力の結果得る優越感ではなく、金力とか、シャークと呼ばれているようですが、他人を引っ掛けるような手段で手に入れる優越感です。
子供がカードをショップで換金できるのにも、抵抗があります。
「そこ(カードのレア性に差があるところ)が楽しい」という人もいるかもしれませ
んが、そこを失くすとつまらなくなるようでは、しょせんそれだけのゲームかと。
ゲーム自体が本物ではないということかと思ってしまいますが。
また、「殿堂入り」の件ですが、やはり子供を舐めているとしか思えません。
自分たちのマヌケを「殿堂」という言葉で飾ってごまかして。
これが子供の範たるべき大人のやることかッと頭に来ます。
子供たちは「殿堂」の言葉を誤って理解するのではありませんか?
これが大人相手の商品ならこうはならないでしょう。
まず、「販売中の○○○と▽▽▽…にはこのような欠陥がありましたので、使用を制限します。ユーザーの皆様には多大なるご迷惑をおかけし、申しわけありません。」
というお詫びがなされるはずです。
その上で、「お手元に余ってしまったアストラル・リーフ、サイバーブレイン、(あ
と何でしたっけ?)…は、販売店へお持ちくだされば1枚○○円でお引取りします。あるいは他のカードとお取り替えします。」というフォローがあるべきです。
☆☆☆☆☆☆
それでも、面白ければこれらの点は気にならないのでしょうか?
私が重箱の隅をつついているだけなのでしょうか??????
もー気になって仕方がありません。
Rさん・主婦
さてみなさん。
このページをお読みの方は、ある程度カードゲームについての知識と、人によっては一家言お持ちでしょう。
ですからこのお母様のご意見に対し、納得いくというよりむしろ、説明したくなる事が多いのではないでしょうか?
しかし、これがむしろ、一般的な、普通の意見だと思うのです。
これは“誤解”という物ではありません。
だいたい、メーカーも小売店もプレイヤーも、こういった疑問、不満に対してほとんど説明する努力を行っていないように思います。説明責任を果たしていないなら、どう文句言われてもある意味仕方ないのではないでしょうか。
ですから、僕は、カードゲームで商売させて頂いている者として、責任を果たしたいと思います。自分の声の届く範囲で、可能な限りカードゲームに対しての御理解を頂けるよう、努力を惜しまないつもりです。
幸い、このお母様は一方的にカードゲームを非難するのではなく、「こういう所が納得いかないが、なぜか」と“聞く”準備がおありのようです。カードゲームを一方的に排除しようとするのではなく、子供達が楽しんでいるのだから、より良いものになって欲しい、と望んでおられるようなのです。 実にありがたい事ではありませんか。
そこで私も、できる限り自分の考えるところをお伝えしました。
お便りありがとうございます。FB徳島店・池田です。
お父さん、からの意見は良くいただくのですが、お母様からの意見は大変貴重で
、考えさせられる内容でした。
さて、どこからお話しすればよろしいでしょうか・・・
まず、ほとんどのご意見は、一般的に皆様が思っておられる通りの事と思います。
大体において、仰る通りです。
しかしながら、大変失礼ですが、大きく誤解されているところがあると思われます。
1・トレーディングカードゲームは、そもそも不平等を楽しむ遊び
トレーデイング・カードゲームという遊びは、10年前、アメリカのリチャード・ガーフィールド数学博士が発明≠オた、まったく新しい遊びです。
この発明の画期的なところは、
「カードの資産が不平等であるがゆえの多様性」
「コレクション性を持たせる事により、征服欲を満足させる」
「カード資産が変化する事による、ゲーム性の変化」
などという、今までになかったものをゲームに取り込んだ(むしろ、新しい価値、娯楽性を創出した)ことにあるのです。
世の中は不公平である。
だからこそ戦う。だからこそ面白い。
そういったテーマのゲームなのです。
これは、正しいとか、間違っているとかいう問題ではありません。
これが楽しい、と思う人が選び、遊べばいい事なのです。
そして、面白い、と考える人がたくさんいたからこそ、新しい遊びとして世界に広まったのです。
奥さんのおっしゃる通り、平等な資産で、平等な戦力で雌雄を決する競技を求めるのなら、
それはつまり、チェスや将棋をすれば良い事ではないでしょうか。
これはこれで、素晴らしい競技、娯楽です。
トレーディング・カードゲームとは、これらとは違う≠烽フなのです。
他人と持っているものが違う≠ゥらこそ、そこに、トレード≠竅Aオリジナルデッキ構築≠フ楽しみが生まれるのではないでしょうか。
考えすぎかもしれませんが、今の子供達がトレーディングカードゲームに熱中するのは、戦後、「平等」という幻想を刷り込まれて育ってきた世代に対する、強力なアンチテーゼとも受け取れます。
この日本という国に守られている限り、権利は平等ですが、能力・資産・才能は平等ではありません。「世界に一つだけの花」の例を出すまでもなく、それが個性というものですよね。
僕達の世代は「平等・没個性・みんないっしょ」を強制されてきた面があるように思います。旧態然とした教育環境では今もそうかもしれませんが、今の子供達は、個性とは、不平等なもので、それを前向きに肯定して、遊びの中にも取り込んでいこうとしているのではないでしょうか。
そうだとしたら、子供達がとてもまぶしく見えてきますね。
2・禁止&制限カードに代表される、デザインの失敗について
結論から言ってしまえば、後から禁止カードが出たりする問題点は、トレーディング・カードゲームの内包する、無限の組み合わせによる混沌、予測できない可能性から、どうしようもなく発生する問題だと思います。
いや、だからといって、それで良いわけではありません。
我々がメーカー、デザイナーに改めていって欲しいと考えているのも正にそれ。せっかく買ったカードが使えなくなる、というのは要するに不良品を売った、とい事ですからね。
もちろんこのままで良いはずがありません。
しかしながら、デュエルマスターズを作ったウィザーズ・オブ・コースト≠ニいう会社は、マジックを発明し、長年に渡って、膨大な予算と人的資源を使用し、カードゲームを作りつづけ、数多くのゲームデザインに関する論文を書き、研究を続けている、とにかく「良い物を作ろう、自分たちの生み出したトレーディング・カードゲーム≠ニいう発明を、より完成された物にしよう」と、凄まじい熱意と責任感を持って、あきれるほどのノウハウを積み上げている会社(ネット、書籍にて発信されています。自分たちのノウハウを、公開しているのです!!)ですが、
それでもアストラル・リーフを生み出してしまうのです。
ゲームを作るという事は、傍から見ている以上に難しいものということなのでしょう。
あの囲碁ですら2002年にルールが変更されています。(「コミ6目半」へ各社に申し入れ・日本棋院・コミ、妥当なのは5目半か6目半か)
また、ヨーロッパで五世紀以上の歴史を持つチェスも同じく、長い研究の結果、十九世紀に
「先攻絶対有利理論」が完成され、えらい事になりました。
その後、さらに研究が進み、対抗戦術がいくつか発明されましたが、それでも後攻は“引き分けに持ちこめたら勝ち同然”とまで言われるゲームになりました。
将棋やチェスほどの長い歴史のある物でさえ、いまだ不公平があり、禁止カード(カードではありませんが)やルール変更が出る必要がありうるのです。
あまりにも長い歴史を持つが故に、我々が知らないだけで、本当は、将棋も囲碁も、最初のルールから少しずつ変化しているのです。
いわんや、たかが10年そこらのカードゲームならば。
殿堂ルールや禁止カードが出る理由が、お分かりいただけたでしょうか?
もちろん、だからといって、デザイナーが甘える事は許されません。より良い物を生み出し、お客さまに喜んでいただくのが使命であるべきです。
我々は、そういう熱意、責任感の感じられる商品を作っているデザイン会社、その価値を理解しているメーカーを応援しています。
カードゲームのコレクション性、拡張性を悪用し、テレビ放映中のみ商品を売りつけ、ゲーム性を破壊して売り逃げ≠キる、たとえばトミーのシャーマンキングカードゲーム≠ネどは、絶対にオススメいたしません。こういった商品には、警鐘を鳴らしていきます。
どうか、トレーディング・カードゲームという、若い遊びを、そしてそれを楽しもうとしている子供達を押さえつけず、より良い方向へ導いてやっていこうではありませんか。
彼らの個性、他には無い良い所を伸ばし、間違った方向へ行こうとした時にこそ、叱ってあげるのが良いのではないでしょうか。
我々は、そう考えています。
お母様と僕の、“愛の交換メール”はまだ続くのですが、今回はここまで。
「我ながら、賢そうな文章が書けたぞ。んふんふ。」
とか思っていたのですが、お母様から即座に、意外な問題提起が・・・!!
後編に続きます。
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