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ついつい長い返事を送ってしまったお便りシリーズ その1
カードを捨てる子供問題 〜彼らは何ゆえ捨てるのか〜
当ホームページには、僕あてのメールがたくさん送られてきます。
こちらの気づいていなかったカードのテクニックや、様々なゲームへの意見などのお便りを下さった方には、もちろんお礼のお便りを(ずいぶん遅れたりして申し訳ないんだけど)お送りいたしますが、ほとんどはお返事を返している時間がありません。(ごめんなさいでも全部読んでるよ)
そんな中、ごくまれにですが、
「これは返事を書きたい!」
と、どうしても思うお便りがあります。
そんなときは、ついつい時間をかけて長々とした返事を書いてしまい、シマムーやハリーに、
「時間を無駄にしないで下さい!」
とか、
「こんなに重要なノウハウを、タダで教えるとは何事ですか! NOですよNO!」
とか激しく非難されます。
フランチャイズ事業を始めたのだから、当社のノウハウは、それこそ“価値”として機能し始めたのですが、それを一部とはいえ無料で“だだ漏れ”させる事は、やはり企業としてどうか、というお2人の意見。
まったくでございます。
しかしながら、どーしても、時々はちゃんとしたお返事を返したい、と思った僕は。
逆ギレ企画を開始する事にしました。
「わかったわい! だったらそれを、記事にすりゃあ良かろーが! いっそのことホームページを見て下さる、業界の方々たくさんの人に見てもらおうじゃないの。うきゃきゃきゃ!」
むろん、フランチャイズにご加盟下さる方々にお伝えしているほどの情報は書くわけにいきませんが、お客様からのお便りによる、ちょっとした問題提起に対し、僕達が考えている事をご覧頂き、業界の方々や、ユーザーの方々が、それぞれのご意見を深めていただければ幸いに思います。
て、なわけでこれから、僕がついつい長々とした返事を書いてしまったお便りを、記事としてご紹介していこうと思います。(もちろんすべて、相手様のご了承を得たもののみです)
さて今回は、最近頂いたお便り。
カードゲームショップでアルバイトをされている学生、Yさんのお話です。
こんにちは。店長殿!! 私はカードショップにアルバイトをしている大学生です。
私が勤めているカードショップでは、連日のように子供たちが来て、デュエルマスターズを買っていきます。しかし、カードを買うのはいいんですが・・・
今の子供はいけませんな〜誠に許せませんよ。
「わーまたこのカードが当たった〜」
「レアやけどコレならノーマルと一緒だよ」
など喋り、道端にカードをばらまき、帰っていくのです。
これは時代が生んだ悲劇です。私はマジックを中学生までやってたのですが、カードを捨てるなんてことやったこともありません。
子供が買うカードの金は親が必死にはたらいて貰った金です。決して親はそんなことをするために与えているのではないです。
私はカードが落ち葉とともに掃かれているのを見てとっさにひろいました。
地域のかたがたも「もったいないね」といって協力してくれました。涙が出ました。
後日、私は常連の子供たちを集め、叱り飛ばしました。その子たちはもうしないといってくれました。
しかし、今でも「カード落ちてたよー」と子供がカードを持ってきます。私はそのカードをデッキに入れ使っています。
そうすることで、「こんなことをしてはいけない」と、カードで訴えています!!
長い文章で見にくかったと思いますが、このような最近の子供の意識を知ってもらうためにメールを送りました。ぐちぐち愚痴ってごめんなさい。
もしよろしければ、店長にもこのカードを使ってもらおうと思っています。使ってくださるなら、お手数ながらメールを送ってください。
さて、ここから先は、上記のお便りに対する、僕の返信です。
今読み直してみると、えらそうな事この上なく、実に赤面モノなのですが、一方的な僕の物言いを冷静に受け止め、記事にする事を快く了承してくださったYさんに、心から感謝します。
始めまして。カードキングダムの池田です。お便り、読ませていただきました。
いや〜、うんうん。そう思いますでしょうね。僕も昔はそうでした。
しかしながら、それを「時代が生んだ悲劇」と呼ぶのは・・・・
青い! 青いよYくん!
子供ってのは、昔からず〜っとそうなの。いらないものは捨てるの。
(道端に捨てるのは、もちろん、怒るべきだが、「もったいない」と泣く前に、大人として考えることがある)
僕らの世代では、仮面ライダースナックのスナック菓子が捨てられて社会問題に。
それから何年かたったら今度は、ビックリマンシールだけ抜いてチョコを捨てる子供たちが問題に。
「もったいない」を教えるのは、確かに現在、飽食の日本では難しい。
しかし子供は正直だ。いらないものは、ガンガン捨てる。持ってても仕方ないものは、本当にもっててもジャマになるだけだから、捨てるのが、実は正しいことだ。
だって、持ってても何にもならないじゃん。必要以上に同じカード持ってても、しょうがないでしょ?
ジャマになって、片付ける場所が無くなって、散らかして、お母さんに怒られる。
そんな状況で、どうやって「使わないカードも大切にしよう!」って心が育つのよ。
(繰り返すが道端に捨てる事は怒るべきだ)
いいかね。「最近の若いモンは!」って言うのは簡単だ。自分のプライドも保てる。
が、それで何が生まれるんだ?
違うぞ。ぜんぜん違うんだ。
ここからが本当に伝えたいことだぞ。
「この子供たちは、なぜカードを捨てるんだろう?」と、考えることからスタートするんだ。
実は僕が、カードショップを作ったのも、玩具店で働いていて、目の前で遊戯王カードを捨てられた事に起因してる。
君と同じように僕も、マジックからカードゲームを始めたから、「カードを捨てる」というのが信じられなかった。
だけど僕はそこで、子供たちを叱ったりはしなかった。
(それはもちろん、道端に捨てたことは怒ったが、「もったいない!」と子供たちに通じない言葉で叱り付けはしなかった)
考えたのは、「なぜこのカードが捨てられるのか」だった。
結論から言えば、当時の遊戯王には、単純に数値の小さい、存在意義の無いカードが大量にあったためだが、そこでこう考えた。
「こんな、存在意義の無いカードを作って、宝くじのように“当たりの、強いカードを持ってる人が勝ち”なんてゲームを広めたら、せっかくの素晴らしい発明、“トレーディングカードゲーム”が滅んでしまう!」
物を捨てる子供に怒る前に、子供が捨てるようなものを平気で作る、大人に怒るべきなんじゃないだろうか。
その後店を作り、徹底的に遊戯王を弾圧する営業を2年ほど続けたわけだが、メーカーの考え方も変わり、ゲームデザイナーも変わり、遊戯王は真に子供におすすめできる、良いカードゲームになった(と、今の僕は思っている)。
あれだけ非難していたものを、今では全面的に指示しているのだから、一見、節操が無いように見えるかもしれない。
が、「良いものになった」のだから、いつまでも非難するのは、単に「非難のための非難」になっちゃうわな。
少し脱線したが、つまりこうだ。
一方的に子供たちを叱るのではなく、まず目の前で起こっていることの本質を理解しているか、という事。
次に、これは、カードゲーム専門店で働いている君に、だから言うのだが、
捨てるようなら、なんで引き取ってあげないの?
当店では、デュエルマスターズや遊戯王のようなオススメできるゲームなら、どんなカスカードでも、どんなに大量でも、絶対に、何があっても買い取るよ。(ボロボロでない限りは)
それが専門店の責任だと思うから。
店先で捨てられるような、価値の無いものを売ってます、と、君は言えるかい?
言いたくないだろう。
なら、捨てるのを叱るのではなく、何らかの方法で(例えば100枚で1パックと交換とか)、最後の最後のカスカードまで、利用価値がある、という風に、受け皿を作るべきなんじゃ、ないのか。
また、使われないカードを、どうやったら活躍させられるのか、教えてあげればいいじゃないか。
価値というものは、ほとんどの場合、人工的に作り上げていくものだ。
我々が商っている物は、生活必需品ではない。
不要なものだ。
それに対して、
「欲しい!」
「価値がある!」
と思ってもらえるよう、また、実際に楽しんでもらえるよう、演出し、サービスを提供し、「価値を創出」していく事は、必要でないもの→娯楽品を商う者の義務だ。責任だ。
スポーツ選手は、勝てば良いのではなく、人々を魅了するプレイをして始めて一人前だ。
カードゲームを売って、糧を得るなら、プロであるなら、カードゲームの魅力だけにぶら下がって商売してはいけない。
カードゲームを、より魅力的なものと感じてもらえるよう、価値を創出してゆくクリエイターの気概を持って欲しい。
色々言ったが、ただ単に漫然と店員をやってる凡百のアルバイトと違い、方向性はどうあれ、子供たちのありようについて、大人として責任のある対応をしようとした、君の行動は尊い。
近所の人たちと話をして、泣けてきたのもよいコミニケーションだったろう。
しかし、それだけの事をやった、君にだから、期待する。
「最近の子供たちは・・・」で思考停止するな。
思考停止は成長を止める。なにも生み出さない凡百に埋没するだけだ。
近所の人たちと感動的なコミニケーションを取ったところで、満足していてはいけない。
本質を追求してくれ。
そして、問題に対して、プロとして解決策を模索してくれ。
それじゃあな。
P.S.当店でも昔、カードが捨てられる問題が発生し、結果として、「全て買取る」という手段が生まれたのです。
それにより、少なくとも徳島店周辺では、子供たちの間では「カードを捨てるのはアホ。捨てるぐらいならカードキングダムに持っていくべき」という考えが浸透しました。
これが進むと、さらに「カードいうものは、金の無駄では無い」という認識が広まり、カードゲームそのものの権威、価値が底上げされます。
長い歴史を持つ、ヨーロッパのトレカ市場ではカードに価値があるのは当然の事ですが、日本ではこうした工夫で、価値と権威、すなわちお客様に対する安心を作り出していくことが、我々の責任と考えます。
と、まあ、こんなお返事を送っちゃいました。
さて、最初、このお返事を書き上げた後、アルバイトのヤナーに読ませてみたところ・・・・
いけっち店長「・・・どう思う?」
ヤナー「問題はズバリ、受け取り手側の理解とか度量ですねぇ。普通、怒るんじゃないかと」
いけっち店長「むう。賢いなオマエ。まさに受け取り手しだいで、ヘタすりゃ単なるケンカ売ってる文章だよな」
そうならなくって、本当に良かったですわ。
今度は、練馬春日店店長、シマムー(マダムキラーロボ)に読ませてみました。
「こんな長い文章を! いったい何時間かけたんですか! NOですよNO!!」という返事が返ってくると思ったのですが、
「どうかね、シマムー・・・・・」
読み終えて、ゆっくり振り返るしまむー。
「社長・・・これは、カッコ良過ぎませんか?」
「おお、珍しくほめてくれるじゃないか。照れるんやし(泉州弁)」
「いや、もちろん、こんな事に時間をかけた事は許せませんが」
やっぱりか。
しかし、一番怖いのがぼくの彼女(グウ似)。
電話で、こういうお便りが来たよ、とだけ伝え、僕の意見を全く伝えず、
「さて、僕はどういう返事を書いたと思うかね?」
とだけ聞いてみると、間髪いれず、
「・・昔、ライダースナックを捨てる子供もいたと言うし、問題はなぜ子供が捨てるか、だな」
何で全部わかるのよ。
神か、あんた。
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