FB徳島カードゲーム戦記6回(04.05.12)


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 えー、本当にお待たせしました。カードゲーム戦記第3回をお送りします。
 前回も書きましたが、「こんな記事、誰が読むねん」と思ってましたが、実にたくさんの方から反響がございました。
 嬉しい誤算です。びっくり。
 みんな本当に真面目に考えてくれてるんだなぁ…。空回りしてなくてよかった。

 と、いう訳で「読んでくれている人が多いんだったら」と、どんどん濃い、長い話になってしまいました。
 これも読んでくださっている皆さんが、私が考えている以上に真剣な方ばかりだったので、安心して書けるようになったためです。

 「いけっち店長のひとりごと」にも書きましたが、最近コロコロコミック編集長やタカラのカード課マネージャーさんともお話させていただいて、書くべき事がどんどんたまってます。
 "カードゲーム戦記"は、現在の記事"カードゲームサミット編"が終わっても、まだまだ続きそうなので、どうかお付き合いください。

 それと、この原稿は、まずブロッコリーさんに見ていただいてから当HPにUPしております。
 冷静に考えれば、すごい事なんですが、ブロッコリーさんもよくこんな記事にまったく変更無しでOKだすよな、と思いますよね。
 そもそも、業界の活性化を狙って各小売店の店長を呼ぶ事という事からしてスゴイ。
 (交通費、宿泊費、食費全部ブロッコリーさん持ち)

 とにかく外部から、それもお客さんから声を聞こうという態度はなかなか他のメーカーには見られません。

 このことは一度でも欠陥商品(カードやTVゲームなどで"クソゲー"と呼ばれるもの)をつかまされた経験のある人になら、分かってもらえると思います。

 私も今まで、実にたくさんのメーカーさんとお話しましたが、だいたいは営業さんレベルで話が止まってしまい、実際の商品にユーザーの意見を取り入れようという姿勢が明確なところは、ほとんどありませんでした。
 例外はブロッコリーさんと旧ガンガン編集部くらいではないでしょうか。
(旧ガンガン編集部とは昔のガンガンヴァーサス(NEOではない)を作っていたところで、今は雑誌『コミックブレイド』を作っているところ。
 話すといろいろと長くなるが、ガンガンの本誌4ページに渡ってエラッタが掲載されたことがあり、そして、そのエラッタはほとんど当店が作った)

 カードゲームはまだまだ若いジャンルであり、本当は作り手とユーザーがお互い手探りで作りあげていかなければならないハズなのですが、なにしろTCGを作っている人のほとんどが初期からのMTGなどの難しいゲームから入ったいわゆる『濃い人』であり、しかもほとんど独力で作り上げている、ようするに『傲慢』な作り手ばかりなのです。

 一度、とあるゲームのルールやテキストが理解しづらく、製作者側に尋ねてみた所、テストプレイは内部でのみで、「子供に1セット渡して、説明書からだけでプレイできるかどうか」とかはやってなかったそうです。
 これでは読みづらいのも当然でしょう。

 ようするに、謙虚さが必要なんだと思います。少なくとも、カードゲーム会社としてのブロッコリーはそういう方向に進もうとしている、と今回の事で感じました。



 では、前置きはここまでにして、そろそろ本編。

 えーっとなんだっけ、そうそう、カードゲームサミットの会議でしたね。

 会議が始まって1時間くらいだったと思う。参加者のほとんどが単なる"アクエリプレイヤー"として来ていたため、アクエリの議題以外ではなかなか建設的な意見は出ない。
 そんな中で、オレを合わせて4〜5店の代表の人達が中心となって、会議が進んでいった。

木谷社長「最初に言ったように。カードゲーム市場にはこれからも、先細りせずに続くものだと考える。
 が、今現在、以前より縮小している理由として、以下の2つが考えられる。

 1つは以前のブームが大きすぎたと言う事。

 もう1つはネットワークゲーム。
 ネットゲームのプレイヤーは主に、コンシューマーゲーム、パソコンゲーム、カードゲームなどから流れてきた人が多く、特に後者2つは、もともと市場が小さいので数割取られている」


 これは確かにある。当店の常連にも"ラグナロク・オンライン"などにハマり、"廃人"と化した人が何人かいる。
(ネットゲームヘビーユーザーをこう呼ぶ)
 特にアクエリやリーフファイトなどの"萌え系"カードゲームをプレイしていた人に多い。
 もとよりヲラクはコミュニケーション能力に自信がない人が多いと思われるので、直接顔を合わせて遊ぶカードゲームより、ネットゲームの方が気楽なのかもしれない。

 しかし、オレもそうだからわかるが、だからこそヲタクは"自分の仲間"がいる場所に、離れがたい魅力を感じるものだ。そんなところが滅多にないからこそ。

 当店もぶっちゃけ、昼は子供の集会所、夜はヲタクと良くないオトナの巣窟だ(笑)
 中にはカードゲームを全然やってないのに毎日遊びに来る人もいる。
 TVゲームはあるわ、本棚はマンガで一杯だわ、およそヲタクの好きな物は何でもある。
 だが一番の要因は、「そこに人がいるから」だ。

 ネットゲームがこれからも、カードゲームのライバルになるかどうかといえば、それは間違いなくライバルであり続けるだろう。実際面白そうだし。

 しかし、「食われる」事は絶対にないと言いきれる。
 なぜなら、人間はやっぱりアナログで、もっと人と会わなきゃ「生きてる」と感じられないものだからだ。
 デュエルスペースを大事にする限り、カードゲームは大丈夫だろう。

「だが、人が来てくれても、カードが売れなければ何にもならないのでは?」という心配は確かにある。

 が、日本よりもネット環境が進んでいるネット先進国の、たいていの物がコピーで手に入るような状態でも、やはりきっちりパッケージされた"商品"(CDや本などのソフト)も売れ続けているのだ。

 やはり良いものがあれば、本物が欲しくなるのが人間なのだ。良いものなら。

 みなさんは、遊戯王の"アルティメットレア"(レリーフとも呼ぶ)を見た事があるだろうか?
 アルティメットレアとは、絵柄に合わせてカードに凹凸加工を付けているもの。
 遊戯王の真に優れたゲーム性を理解せず、ただ単に毛嫌いしている人でも、これを見れば素直に「すげぇ!」と思った事だろう。

 ただ単に「封入率が低くてレアですよ〜」というガンダムウォーやMTGのレアと違い、見た目から明らかに「タダモノではない」という加工をカードに施し、誰が見てもレア、誰が見てもスゴイ→欲しい、と演出し、価値を"作り出している"のが遊戯王OCGだ。

 そもそも、カードゲームなど結局はしょせん紙切れ。これに価値がつくのは突き詰めて言えば幻想でしかない。
 だが、これに優れたゲーム性があれば"競技"、または"コミュニケーションツール"としての価値が付き、その中で封入率が低い"レア"となれば"希少価値"が発生する。

 ここまではTCGなら全て自動的に持つ事のできる価値であるが、それに甘えることなく、それ以上の演出を持って"価値"を創出していったのが遊戯王OCGなのだ。


 これは実際、トレーディングカードがホビーとして定着している海外では当たり前のことで、様々な加工でカードを演出するのが、"トレーディングカード"という商品の売り方の基本テクニックだ。
 日本でもアイドルやスポーツのカードなどは"レーザーカット""ジャージーカード"など、あの手この手で目新しく演出している。

 どこかで開発された技術や方法論を、キチンと先人の積み上げてきたものとして学び、受け継ぎ、さらに積み上げて行く。
 これが文化というものだ(カードの加工には、もちろんコスト問題も大きく絡むが)。

 日本TCGには、この謙虚さと、勉強しようという意志、これらが全く欠けているモノが多い。多すぎる。
 世界的に見て、「カードホビー後進国」といわれても、まったくしょうがない。

木谷社長「こないだ、ハズブロー(世界最大の玩具メーカー)の社長にお会いしたとき、
 ブシロード(ブロッコリーの新企画)の話を出すと、一番最初に
『それは何人キャラクターが出るのか』
 と聞かれたんですよ。
 なぜ人数が重要か?と聞くと、
『ようするに、何枚カードが作れるか、と言う事だ』
 と、おっしゃるのですよ」


オレ「世界最大の玩具会社の社長が、まずカードゲームを?!』

木谷社長「そう、"ポケモン"があったからでしょうけどね。
 とにかく海外では、1つの企画について、まずカードについて訊かれたぐらい、カードゲームがものすごく大きいんですよ」




木谷社長「日本国内では低年齢層が盛り上っているのに、中高生以上で盛り上がらない。
 もしかすると、中高生が選べるカードゲームが少ないからかもしれません。
 どうやって低年齢層から中高生の間をつなげられるのでしょうか?」


 つまり木谷社長はこう言いたいのだ。
 デュエルマスターズや遊戯王には少し子供っぽさを感じて手を出せないし、大人向けのゲームをやるにはまだ早い、という中高生の年齢層が空いている。
 そこへ売りこむにはどうすれば良いか、と。

 しかし、これは具体的なアイディアは難しい。
 なにしろ萌え系でなく一般の中高生向きのカードゲームといえば、MTGかガンダムウォーくらいしかないのだ。
 間違いなく隙間がある。とはいえ、キャラクター無しでゲームを立ち上げても、注目してもらうのは難しいだろうし、"ガンダム"に匹敵する巨大なキャラクターも見当たらない。

 キャラクターのないゲームの例として、“神の記述”というゲームがあった。
 "神の記述"はむちゃくちゃおもしろいゲームで、当店でも何度も大ブームになったが、すぐにブースターが売りきれ、再入荷も難しく、しぼんだ。
 これはキャラクターがなくても本当に面白いものは売れる証拠だが、それもちゃんと遊べる場所があるとこで人目に触れて初めて、の話。
 キャラクター無しで全国的に売れるか、というとムリだろう。
 ゲームが良くできているだけでいいならば、"神の記述"は全国ブームになっていたはずだ。

 中高生向けの巨大なキャラクターといえば、"7""8"のあたりのPSブームに乗った『ファイナルファンタジー』などが一般的に認知されたものだったかも知れないが、逆に大きすぎて難しいかもしれない。
 アニメや映画が成功してはいないように、「FFらしさ」を出すのは難しいのだろう。

 考えれば考えるほど、"ガンダム"に匹敵するキャラクターが見つからない限り、中高生向けの新たなカードゲームはヒットさせる事ができないのではないだろうか?




 結局、新作ゲームを作るには新キャラクターのヒットがなければ難しそうなのでひとまず置いておく事にして、今あるアクエリアンエイジ(以後アクエリ)やモンスターコレクション(以後モンコレ)を売るにはどうするか、という話になる。

 すると、今の問題点についての意見がどんどん出てくる。

A店「モンスターコレクションは昔から、絵に大きな魅力があって、これはアクエリにも言えますが、コレクターさんとゲーム中心の人がいます。
 で、ゲーム中心の人はゲーム的に「強いカード」を求めて、イラストはニの次。
 コレクターの人は「強い」のには興味がないのですが、絵も強くて、しかも強いレアカードなどが出ると、両方が求めるので、相乗効果でものすごく高くなるんですよね。これはやはり、ある程度ワザと作っているのでしょうか?」



小笠原さん「まずカードのイラスト内容を決めて、このテーマならこの作家さん、例えば末弥純さんに書いてもらいたいなぁ、と我々が思ったら末弥さんに。女の子の絵だったら、女の子の得意な方に…と、割り振ります。

 その時点では、どのカードに強いテキストが付くのか、我々には分からないわけですよね…。
 ですから、全くのランダムといえます。

 たしかに、強くてイラストがよければ、両方からひっぱりだこでしょうが、ワザと組み合わせる、という事はないですよ」



 この話には追加がある。会議のあと、オレと小笠原さんは同じ席で食事するのだが、その時にオレが、

オレ「さっきの話ですが、しかしなんだかんだ言って、【花園の歌姫】は盛り上がりましたよね」
(【花園の歌姫】は、絵、強さ、ともに人気ブッチギリだった、モンコレを代表するレアカード)

小笠原さん「そう、やっぱりスターカードは必要ですよね。さっき言ったとおり、ワザとはつくってはないんですけど」

オレ「オレもプレイヤーですが、『何々がすごいレアで高いよ!』と文句いいながらも、それを引きたいからパックを買うんですよ。
 で、持っていることを自慢したいからデッキを組む、というのも正直あるんですよ。
 こんな事おおっぴらに言えませんが(今書いてるけど)、カードゲームの魅力の1つとして、『人気レアをぶん回す』という爽快感も確かにあるんですよね。

 また、コレクターにもゲーマーにも人気のあるカード、というのは、コレクター、ゲーマー間のトレードを活性化させ、そこにコミュニケーションが発生するから、単なるコレクターだった人がプレイヤーになったりするチャンスができるんです。

 だから…それもあって【花園の歌姫】があったころが、モンコレの一番盛り上がったんじゃないかと」


小笠原さん「そうですよねぇ。なんだかんだ言って、中心になって目立つカード必要だと思いますよね」

オレ「『このレアが5000円もするんだぜー』と聞いたら、興味のない人も『もしかしたら引けるかも』って興味を持ちますよね。
 この『引けるかも』と思ってもらえるのが大切で、高いカードが単なる限定品であったり、プロモであったりしても意味がないんですよ。
 パック買っても引かないわけだし。当てる楽しみがない」



 まぁようするに、『封入率が異常に低い』とか『特別な手段でしか手に入らないプロモが強い』などは、競技でもあるTCGに置いてマジ勘弁、なのだが、普通にパックに入っているレアに人気が集中し、高価になるのは仕方がないし、逆に盛り上がるのではないか、という話だ。

 もちろん程度問題であって、MTGの【極楽鳥】や【神の怒り】は使うなら4枚必要なカードなので高価になるが、これを4枚いれるのはある程度ゲームを分かっている人であって、どんなデッキにも4枚入るモノではない。
 ゲームをわかっている人間にとって、MTGはそこまで金をかける価値があるわけで、1枚1000円や2000円のレアカードは納得できるラインだろう。

 つまり、『ゲームに慣れなら、変わったデッキを作ってよう。そのためのカードはレアだけど、慣れるほど遊んだのなら、ある程度カードは揃っているよね?』ということだ。

 しかし、ガンダムウォーの【急ごしらえ】や【宝物没収】などは、色が合えば全てのデッキに3枚入る基本カードでありながら、レア。
 なにしろドローサポートカードなんだから、デッキテーマにほとんど関係なく全力で必要だ。
 なのに、なぜかレア。

 これでは『いっぱい買った方が勝って当たり前だぜー! レアを多く持っているほうが勝つぜー!』ということだ。

 確かに平たく言うとその通りだが、何もそれを助長するレアを作らんでも良いだろう、と言いたい。

 デュエルマスターズで言えば、『【アクア・ハルカス】と【エナジー・ライト】がスーパーレア』という、地獄絵図のような設定だ。

 おかげで、当店通販の構築デッキを見てもらえば分かると思うが、ガンダムウォーはすごい価格差だ。
 だいたいのデッキは5000円前後に押さえているが、容赦なく必要なレアを全力で叩きこむと、なんと4万円を超える。どんなゲームやねん。
 まぁ、大人の遊びとしては安いものかもしれんが(ゴルフや車と比べると)。
 実際、4万円デッキもよく売れるが(これでも安くしてるんです。マジで)。



 悩んでいると、他店の店長さんが、良い事を言い始めた。
 現在のTCGを売る方法なのだが、構築済みデッキを限定品にせずに、常に仕入れられる商材にすべきだ、という意見。

 例えば、アクエリアンエイジの構築済みデッキは、とても良く出来ていて、初心者の
「とりあえずやってみたい」
という人にオススメして、すぐ遊んでもらう事が出来るが、限定商品のため、常備できない。
 これが常備されていれば、新規ユーザーを取りこむのに大いに役立つはずだ、というのだ。

 この意見には、オレも構築済みデッキを自分で作って売っているくらいだから、両手を挙げて賛成。
 やはり大きな店を任されている人は、ちゃんと商材を見ている。

 オレも、ガンダムウォーの構築デッキやベースドスターターが出たとき、どれほどユーザーが増えたかを引き合いに出し、構築デッキの必要性を訴える。
 新作ゲームを作るにしろ、今あるアクエリを広めるにしろ、どっちにしろ重要な売り方だ。

 ブロッコリーさんも大いに納得したようで、今後のラインナップに生かしていくとの事。


 他にも店側から色々と苦情が出る。
 中には確かにメーカーさんが何とかしてくれないと解決しない事もあったが、ほとんどは、
「いや、その問題については当店ではこうして解決してますよ?」
と、販売店側の工夫で何とかなる事が多かった。

 オレ自身、「なるほど、そういう方法があったか」と感心する事もいくつかあり、この議題はお店側にとっては得る物があったと言えるだろう。

 「あまったカードの利用法」「大会の告知の工夫」「初心者にゲームを始めてもらうためのサービス」など、各店で開発されていったノウハウは、今の所あまり他所には伝わらず、その店がなくなったら消えてしまっている。
 当店の大人気イベント「月間チャンピオンレース」も、元はといえば他店の方に教えてもらったものだ。
 それを改良、強化して今も続かせているからこそ、当店は常連が多い。

 どうやらやはり、カードゲーム業界の活性化と、プレイヤーみんなに楽しんでもらうためには、"カードゲーム屋"という実は全く新しい商売のノウハウを、積極的に蓄積して行く必要があるのではないか…?




次回予告

 何だ何だ?! 結局前回の予告は何だったんだ!
 今回全然関係ないぞ? 責任者出てこい!!

いけっち店長「すんまそん」

 ろくな構築力もなく、行き当たりばったりに書いているせいで、予告と全くちがった第3回カードゲーム戦記!!

 次回いよいよ「売れてるゲームはなぜ売れている?」の話に!

 デュエマスとガンダムウォーはなぜ人気?!

 "ゲームぎゃざ"はほんとにカードゲーム雑誌なのかしら?!

 次回、すぐ執筆に取り掛かります。カードゲーム戦記第4回!

『分かたれしテーブル』 「すんまそん、すんまそん」


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