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TVゲーム VS カードゲーム
ここしばらくの間にテレビゲーム関連の新商品がいくつか発売されたが、実に出来が良いものが多かった。
特に『ドラゴンクエスト8』は、久しぶりに安心して楽しむ事ができる、素晴らしい完成度だ。
セリフや効果音、ストーリーの演出の端々に、懐かしい“掘井節”を感じ、「ああ、やはり僕達は“ドラクエ”で育ったんだなぁ」と感慨深くなる。
恋人同士で一緒に遊んだりすれば、お互いに昔遊んだゲームを思い出し、会話が弾む事もあるだろう。
個人的な意見だけどドラクエは、“6”はインパクトが薄く、“7”は初めてもすぐにやめる人続出、という、「もうだめかも感」が一時、あったゲームだと思うんだけど、今回の“8”のデキの良さは、やはり一度コケたから、なんじゃないだろうか?
ず〜っと大人気で売れまくってて、作ってる人達が「このまま行けるぜ!」と思ってたから、例えば“7”の時、「開始してから3時間で戦闘が1回もないのは、さすがに違うんじゃないか?」と一部のスタッフが思っても、「でも今までハズしてないから」という事で、言い出せない状況だったんじゃないかな。
一度コケた事で、「では、多くのスタッフ、ユーザーの意見を取り入れていこう」という謙虚な姿勢を取る事ができ、上手く意見を取り込んでまとめ上げた。
その結果がドラクエ8の完成度の高さなんじゃないだろうか。
分析するのは簡単な事だけど、実際に作っている人でコケた時に謙虚になってユーザーの意見を取り入れることのできる人って、なかなかいない。
しかもその意見を自分の技術として消化して、一つにまとめあげるなんて事ができるのは、ほんの一握りのプロフェッショナルクリエイターだけだろう。
カードゲームのデザイナーさんとよくお話させてもらっているが、中にはぜ〜ったい自分の我しか通さない人もいて、実際そういうゲームは縮小していっているように思う。
またそこまで酷くなくても、ただ単にシステム的にユーザーの意見がデザイナーに届きにくいようになっていて、デザイナーが孤独のうちに苦闘しているパターンもあるようだ。
(もちろんこれはカードゲームだけでなく、全ての創作物で起こっている事柄なんだけど)
むしろカードゲームは、デザイナーとユーザーの意見交換のしやすい商品だと思うんだけどね。
だいたいにおいて“消費者”は、「もっと何々を!」とか、「何々があればよいのに!」と、事情を知らずに要求する事しかできない。
しかしそういう不満は、たとえばTVゲームではハード性能の限界とか、たとえばプラモデルでは金型の限界とか、ユーザーから見えにくい外側の事情が多かったりするが、カードゲームは紙に印刷するだけなので見えにくい部分が少ないし、カードをコンプリートさえすればゲームの全データも手に入る。
(キャラクターものだと、元のイメージとの兼ね合いといった見えにくい部分があるらしいけど)
ユーザーにとって「なんでこうなの?」と思って納得できない点は、だいたいにおいてプロモーション関係が多いけど、これは情報が足りない故に仕方ない事だと思う。
(例えば『ガンダムウォー戦場の女神』はキャラクター重視エキスパンションなのに、何でキャラの書き下ろしがほとんどどなくて、メカの書き下ろしばかりなのか?とか。
予想では・・・今までメカものの人ばっかりだったので、新しいキャラもののイラストレイターさんを集めるのが難しかったのではなかろうか?)
しかし、ゲームの本質的な部分、つまりゲーム性は、全データが公開されているという性質上、意見交換できるレベルの人がけっこういると思う。
さらに、カードゲームではユーザーは消費するだけの存在ではなく、「デッキを作り出す」という一面においては“デザイナー”なわけだから、部分によっては製作者より詳しく理解している面がある。
これはすごいことですよ。
つまりカードゲームユーザーは、見えにくい事情が少なかったりデータが得やすいので、どんどんデザイナーに近いレベルで意見を提案できるようになりうるし、特にデッキ構築理論などはデザイナーをも越える。
ここまで消費者がデザイナーに近いホビーは、他にちょっと思い当たらない。
この特性は、上手く使えば商品開発がスムーズ、かつレベルの高い、顧客の求めている商品を作り上げる事に役立つと思う。
カードゲームの商品開発、ルール制定などには、ぜひ「ユーザーを活用する」手段を講じてもらいたい。
(具体的には、実際の大会結果を元にした『殿堂入りカード』やエラッタとか、ね)
最近になってブロッコリーさんが、“アクエリアンエイジ”のイベントでジャッジ資格を持つユーザーを集め、今後意見を聞いていきたい、と、ユーザーの協力を求める発表を行った。しかも、社長自らそのイベントに参加した。
これは企業として謙虚、かつ、柔軟な対応だと思う。普通、会社の社長がそんな場に参加するだろうか? カードゲームに力を入れている証拠だろう。
他のメーカーもこうであって欲しいと思うのは、贅沢だろうか。
任天堂DSはまだ買っていないが、
「まったく新しいインターフェース(操作方法)を用意する事で、今までのゲーム(十字キー)に慣れた人と、ゲーム初心者の垣根を取り払い、同じスタートラインから遊んでもらう事を狙った」
という開発思想は、率直に「すげえ・・・さすが任天堂」と思った。
要するに、任天堂は常に、「テレビゲーム屋さん」としての企業に固執しているのではなく、常に新しい遊びを創出する経営理念を持っているのだ。
初の携帯ゲームである“ゲームウォッチ”しかり、持ち運び出来るファミコン“ゲームボーイ”、コケたけど、やってみればすごい“バーチャルボーイ”もそう。
“任天堂DS”は、「ゲームボーイアドバンスの上位機種。」ではなく、まったく新しい携帯テレビゲーム機であり、上手くいけばタッチペンを使った、「アナログメールコミュニケーションツール」として大活躍するかもしれないモノ、なのだ。
「ここから、今までと違う新しい遊びを始めよう!!」という任天堂の掛け声が、聞こえてくるようだ。
テレビゲームは売り上げが年々下降していた。だからこそここで、「今までのノウハウの結昌であるドラゴンクエスト」と、「まったく新しい物である任天堂DS」が注目された。
このままで生き残れないなら、「今までの財産」と「新しさ」を武器に売り込みを掛けるのは、正しい戦略だろう。
ひるがえって我等がカードゲーム業界を見ると、「今までの財産」と「新しさ」を活かして遊戯王が盛り返してきたようだ。
まず、「今までの財産」を活かすために、禁止カードを発表。
内容自体は、「これは禁止にしなくてもいいんでは?」「これにも禁止をかけろよ」などなど人によって意見があるが、今までの「一部カードによってゲームできなかった」という最悪の状況は脱しつつある。
これで昔からのトーナメントプレイヤーも、少しづつゲームに戻ってきた。
次に、最近のセットでは新しい試みとして「レベル付きモンスター」が登場。
これは、例えば【ホルスの黒炎竜LV4】、【ホルスの黒炎竜LV6】といった具合に、名前にレベルが付いており、つまり「これを使えばコンボになるぞ! これを使ってデッキを組め!」というのがわかりやすいモンスター。新しく始める人への良い指針となっている。
そして、新しいアニメも始まり、新しい構築済みデッキも発売され、関東中心のようだが講習会なども積極的に開くといったぐあいに、新しい人を迎え入れるのに貪欲だ。
デュエルマスターズも、今までポケモンやマジックを大きくしてきたコロコロがその財産を活かして、新しくスタートさせたゲームだったので、あっという間に全国的に広がった。
やはり、今までの積み重ねがないものにはお金が使いにくいし、かといって今までと同じでは興味が湧かない。
その意味、発売が楽しみなのがLycee。
複数メーカーの美少女ゲームを題材にしたゲームということで、当店の常連さんたちも、元を知っている人は「これは予約せねば!」と盛り上がっているし、元を知らない人も「みんなやるって言っているしな」と興味を持っている。
やはり他ジャンルとはいえ、今まで積み重ねたものがかなり大きいゲームなので、お客さんの期待度がすごい。
あとは新しい部分、つまりゲームシステムがどうなるか? ここがしっかりしたものであれば、大学・社会人に向けてオススメできる、素晴らしいゲームになるだろう。
1月下旬の発売が楽しみだ。
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