FB徳島カードゲーム戦記5回(04.04.19)


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 はじめに。

 今回のこの日記はすんごくまじめな話です。
 しかも、かなりの業界知識が必要だと思われます。
 つまり、エンターテイメントの記事ではないのです、本当に申し訳ございません。

 こんな日記を書いて、どんな人が読んでくれるのか、自分でも心配ですが、「少しでもカードゲーム業界をよくしたい!」と、もがいている人間がいるとご理解ください。

 そして、カードゲームに少しでも問題意識をお持ちであれば、どうかご一読をお願いします。



第2話 事件は会議室で起こっている!!

 カードゲームサミット開始。
 前回でも説明したとおり、今日ここに集まったのは、ブロッコリーや 角川などの業界の偉い人たちと、全国から選りすぐられた カードゲーム業界のために貢献する店長さん達……のはず(そう、あとでヤバくなってきます)。

 まずはブロッコリー木谷社長のお言葉から。カードゲーム界の現状について。
 この人、なんと『日本全国カードゲーム屋108ヶ所参り』をはじめてます。
 すでに30ヶ所ほどお参りになられているとか。
 社長業はどうした(笑

木谷社長「デュエルマスターズやガッシュベルなどで子供向け商品は好調であるが、高校生以上の商品は不調。しかしながらこの状況は今後の発展につながるもので、 先細りしないマーケットだと分析した。

  (中略)

 カードショップを回って感じたのは、店ごとの営業努力の効果が大きく、そうした店は熱心なプレイヤーが集まり、ゲームについて議論していたりと、業界の一翼を担っている」


 実に正確な分析だと思う。
 考えてもみれば、今の子供たちは物心ついた頃からすでに ポケモンや遊戯王などのカードゲームがあったわけで、ず〜っと遊び続けているのが自然なのだ。
 また、いったん辞めたとしても、学年が変わったりで環境が変わる時、 新しい交友関係を作るのに手っ取り早いのは、共通言語と化したカードゲームだろう。

 次に角川書店、小笠原さん。
 今後の富士見カードゲーム戦略について、いくつかお話。
 『富士見サポートショップ』というものを作り、店頭での講習会などを行うらしい。
 新作ゲームのことにも少し触れる。

 ここから質問コーナー。
 とりあえずオレが挙手する。

オレ「富士見サポートショップの意図は?」

角川:水上さん「ユーザー同士の出会いの場を作るため。カードゲームは遊んでもらってこそ、なので」


 なるほど、各カード屋の店長さんが集められたのは、そういう意図もあったのか。
 つまり、
「業界は、新しい売り方を模索している」
ということのようだ。

 そこからいくつかの店からの質疑応答。
 何を言い出すのやら、「アクエリアンエイジのプロモが強すぎる」とか「大会を各地に転戦するグループがいて、優勝を持っていかれる」などの苦情が出る。
 一つ一つは確かに問題ではあるが、今の議題に則っているか疑問に思う。
 とはいえ、「必要以上に敵を作る必要もないだろう」と大人のフリをしておく。

 が。

どっかの店の人「この前、富士見さんが出した本、『ガンダムウォーアサルトマニュアル』ですが、プロモカードが既存のカードの単なる絵違いじゃないですか。
 あんなの30円くらいで売ってるモンなんですよ。何で新作プロモにしなかったんですか?
 中身の見本デッキレシピも、以前別のところから出た本と半分以上かぶってますし。
 いったい何のために出した本なんです? さっぱり売れませんが」


 プツン。
「……これはイカン」
 ヤバくなってきたオレ。

小笠原さん「プロモについては、バンダイさんから新作の許可は出ませんでした。
 当方の努力不足と言われれば、言い返す言葉はございません。
 内容については、『ルール上のトラブルの多いゲームなので、ジャッジが持っていて役に立つ本がほしい』『初心者向けルールブックがほしい』 というご要望に応えたつもりです。
 そうですか…。売れませんか」


 オレは危機を感じた。小笠原さんは『プロモがないと売れん』と言っている店側の意見に、幻滅したのではないかと。

 また、怒りを感じた。いまだに"プロモ"とか"限定品"で『客を釣る』ことを商売と考えている奴がいることに。

『えぇい、もう物分りのいいフリはヤメだヤメ!! ケンカになってもいい! 言いたい放題言うぞ! しぎゃー!』

 挙手。
オレ「えぇー、先ほどの話ですが…。あなた、まだプロモやら限定やらで客を釣らんと 商売できんのですか(本当にこんな言い方)

 我々はカードゲームが面白い、素晴らしいものだと思って売ってるんでしょう?  良い物だから、自信を持ってお勧めしてるんでしょう?
 ソレが何? 限定プロモが付いてなかったら『何のために発売したかわからん』と?
 いったい自分たちの扱っている物をどう理解しているんですか?!

 だいたい、本の中身を良く見ましたか?
 私の知る限り、ゲーム内スラング("焼き"や"割る"などのゲーム用語) を解説した本なんか、あの本くらいですよ?
 ルールだってわかりやすく書いてるし、引っかかりやすい特別ルールも丁寧にフォローしている。

 見本デッキの半分が使いまわしですって?
 ガンダムウォーのデッキはそんなにしょっちゅう新型は作られないし、代表的なのを載せればそりゃ半分はかぶりますよ。

 それに、あのプロモは初心者が手に入れれば喜んでデッキに入れる、わかりやすい効果の強力なカード。
 わけのわからん新カードより、よっぽど初心者にうれしいカードですよ。

 ようするに、あの本は十分に価値がある、ということです。
 我々は"売る"努力をするのが仕事。"珍しい"とかだけでなく、"価値のあるもの"をね。

 構築済みスターターが絶版になっていて、その中に入っている強力カードである【パーフェクト・ジオング】がもう手に入らないから、満足のいくデッキが組めなくてゲームを辞めてしまう子供もいるじゃないですか。
 カードゲームが好きだったら、そういうのを何とかしたいと思うでしょう?
 我々ショップの役割には、お客のそういう『何とかしてほしい』という不平不満を、 メーカーに訴えてゆくことじゃないか、とオレは思っていますよ」


 一気にまくし立てるオレ。まったく思ったまんまのことを言っている。
 よりによって、同志と思っていた同じショップの人間から、 『もっとプロモを!もっと限定品を!』という意見を聞こうとは。
 そんなに客を釣りたいのか。そんなに踊らせたいのか。
 それは客をバカにしていることになるし、客を尊敬できない商売人は本質的に不幸だ。
 オレはそんな商売はしたくない。

 言われたショップの人は凹んでいた。(そりゃそうだ)
 小笠原さんはオレをみて、「ありがとうございます」と言ってくれた。
 ふっ切れた。
 敵(かどうかもわからんが)を作るかもしれない行動は、 理解してくれる人を生み出すものだ。それが自分勝手なものでなければ。


注)ガンダムウォーはルールブック入りのスターターが再販されない&オフィシャルHPにもルールが書いていないので、途中参入者にはルールが解りにくいという状況にある。
 なので、ルールを解説した本が必要とされる。

 また、構築済みデッキやスターターには限定カードが封入されており、一度市場から切れると手に入らない。
 代表格【パーフェクト・ジオング】は3月の全国大会優勝者デッキにもフルで投入される超トーナメントカードであり、当店シングル価格は1枚4000円以上だが、よく売れている。





 質疑応答は続く。これからどのようなゲームが売れるか? 今までのゲームの問題点は?

オレ「低年齢層向けにゲームを作るとして、遊戯王からゲームを始めた子供たちは "アクションゲーム的"な手軽さをカードゲームに求めているようだ。『トラップカード、オープン!』のような。
 よってドラゴンドライブやドラゴンボールのようなパズルのようなゲームシステムは受け入れられにくい。

 また、大人にも同じことが言える。
 マジックからカードゲームに入った人はパズル的なシステムをTCGに求める。
 だが、もはやコレは少数派になりつつある(必要ではあるし、オレも好きではあるが)。

 いわゆるライトユーザーの『ちょっとカードゲームやってみようかな』と言う人たちにとっても遊戯王が受けたように、取っ付きの良い物が受け入れられやすい。

 そういった理由から、"ランブリング・エンジェル"(以下RA)は、パソコンゲームを買った人たちが気軽にはじめるには、パズル的要素が大きすぎる。
 また、せっかくデッキを組もうと思っても、自分の好きな作品のキャラクターをまとめても デッキにならない、というのも問題だ」


 RAを知らない人のために解説。
 RAはいろいろなパソコンゲームのキャラクターがカードゲームになった、いわゆる"萌え系"ゲーム。
 たとえば、"デモンベイン"というパソコンゲームを買うと、そいつのキャラのプロモカードが付いているのだが、『お、やってみるか』と思いカードを揃えても、何と "デモンベインデッキ"が組めないのだ。
 つまり、デュエルマスターズ風にいうと、"デモンベイン"のキャラクターが5色バラバラの色に入っているというわけ。
 これではデモンベインが好きでRAを始めようと思っても、自分の知らない作品のキャラも使わざるをえなくなり、敷居が高くなってしまう。
 例えば、ガンダムウォーではこれが簡単。「オレはジオンが好きだ!」という人は緑色を使えば勝手にジオンデッキになる。「ガンダムSEEDが好きだ!」という人は白色を使えば勝手にSEEDデッキになる。当たり前のことに聞こえるかもしれないが、RAではコレができない。
 ゲームデザインの初期において、そういった面でのキャラクターゲームとしての考察が足りなかったことは間違いない。
 細かいようだが、これが"商品の完成度"というモノなのだ。
 だいたい、ゲームの進行そのものがすごく地味で、キャラクターファンとして入った人の期待に答えているか疑問だ。

 さて、上記のオレの意見に対し、他店からの意見。

A店「RAは面白いゲームだと思う」
B店「当店ではかなり売れている。ユーザーも多い」


 さてみなさん。申し訳ないが上記のオレの意見をもう一度読んでもらいたい。
 はたしてA&B店の意見は、オレの言っていることへの返事たりうるか?

 さすがに他の人たちも「いや、あんた、おもしろいとかそんな問題じゃなくて」 と思ったのか、困った顔をしている。オレも絶望しかけた。
 これでは会議が進まない。何も生まれん。

 RAを作ったのは"シルバーブリッツ"だが、社長である宮田さんは、やはりわかってるらしく、

宮田さん「個人的にはポケモンのような単純なゲームが一番面白いと思っている。
 ただ、単純なものほど作るのは難しい。」


とおっしゃる。
 さすがリーフファイトの基礎を作った人。"おもしろい"というこの事の本質をわかっているようだ。
 ようするに、RAも本当はもっとカンタンなゲームにしたかった、という事か。
 後で話したときも、『スタッフにはゲームを作るとき、「簡単な遊びやすいゲームに」と、言ってるんですがね』と言っていた。

 が、やはり簡単なルールと奥の深い面白さを融合させるには、蓄積した知識とノウハウが必要なのか。
 "デュエルマスターズ"のような優れたゲームシステムは、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社しか作れないのだろうか…。




 話は進んで、"アクエリアンエイジ"の作者、中井まれかつ氏のお話になった。
 さて大変。
 "アクエリアンエイジ"のゲームバランスについての不満が大噴出。ほとんどすべてのショップ代表が、一斉に意見を言い始める。
 ここではっきりしたことは、ここにいるほとんどの参加者が 「"アクエリアンエイジ"に対し意見を言いたくてやってきた」という事だろう。
 そういう会議じゃなかったハズだが…。

 オレは"アクエリアンエイジ"にはあまり詳しくない。
 だがそれでも 「修正できる点が多いのに、なぜかずっとそのままで問題だらけのゲーム」 という事は知っている。
 確かに今回の会議で、触れておくべきことだとは思っていた。
 だが、それは「カードの何々がおかしい」とか「ルールをこうすべきだ」とかいう、 細かい話ではなく、
『変なゲームデザインにならないために、どうデバックすべきか』
『内容にプレイヤーからの不満があった時、どうメーカーに伝わるようにするか』

という、根本的解決策を論ずるべきだ、と考えていたということ。

 しかしみなさんは、「3段ブレイクのカードが出てしまうと逆転できない」など、具体的なカードの問題点を挙げてゆく。
 一つ一つは非常に正しい意見なのだが、これではモグラたたきである。キリがない。

 で、ここでゲームデザイナー中井まれかつ氏の返答が。

中井氏「数年間ゲームを作り続けてきて、私は失望…というより絶望したんですよ。
 日本にはもうゲーマーはいないのかと


 不思議と人を惹きつける雰囲気をかもし出しつつ、中井氏は語り始める。
 しかし、よく考えるとすごい発言だ

中井氏「私はゲームはかならずしもバランスが取れている必要はないと考えています…。
 明らかに不利なテーマに挑んで、勝利を掴もうとするのもまた、楽しみ方のひとつではないでしょうか。
 また、そうするのがゲーマーだと考えています。
 ですがプレイヤーの方々の意見を聞いていると、『弱いからどうしようもない』とあきらめてしまっている人ばかりで、そういった点に私は絶望してしまったんですよ。

 また、"アクエリアンエイジ"は萌えとゲーム性の組み合わせで、カジュアルなゲームを目指しています。
 あまりにも"ゲーム"として成立してしまっていると、強い人しか勝てないでしょう。
 弱い人でも勝てるように、あえて3段ブレイクのようなものすごい強いカードを作ったんです。
 ゲーマーなら3段ブレイクに勝てるハズだ」


 ここでオレは突っ込んだ。突っ込まざるを得なかった。

オレ「中井さん、あなた、ザンギエフ使ってたでしょう」

中井氏「はい、そうです!」

 どっと盛り上がる会議場。いきなりくだけた雰囲気になる。
 発言したオレは思った。「しまった!! 失敗した!!」
 ここでなごやかになってはイカンのだ。ザンギエフを使っていた人がゲームバランスを語ることの危険性に気づくべきなのだ。

 ザンギエフファンのために、誤解の無いよう言っておこう。オレはずっとエドモンド本田を使っていたので、だからこそ解かる。(両方とも少数派の下位キャラクター)
 我々は少数派で、しかも弱いキャラクターをあえて使っていた者たちだ。
 波動拳と昇竜拳ばかりくらいつつ、逆境を跳ね除けて勝利することに喜びを感じていたゲーマーだ。
 だが、決してマゾヒストではなかった。
「あぁ、昇竜拳を飛び越える技があれば」
「大足払いがもう少し強ければ」
 そういった思いは常にあったし、そう進化するのがストUのあるべき未来だと感じた。
 そして想いはかなった。ザンギエフの大足払いは強くなり、そのかわりにスクリューパイルドライバー後は距離が開くようになった。
 エドモンド本田にはスーパー百貫落としが加わった。
 コレがゲームバランスというものだ。
 エドモンド本田やザンギエフを使っていた人たちの大多数は、強化されたことに対して素直に喜んだはずだ。
(強くなったとたんに使い始めたプレイヤーを少なからず憎らしくも思ったが、それは橋梁というものだろう)
 
 中井氏の話は、カンタンにいうと、「ゲームバランスは取れていないままでいい」「逆境に身を置くのが正しいゲーマー」というものだ。
 そういう意見の人はいてもいいだろう。だが明らかにそれは少数派だ。
 少数派が多数派のニーズを理解せずに、ものすごく大きなプロジェクトの商品開発を任されている…。
 これが"アクエリアンエイジ"の問題点の起源だ。

 オレはこう考えた。確かに"アクエリアンエイジ"という企画は素晴らしい。
 中井まれかつ氏はその…プロデューサーとしては優れていたのだ。
 だが、木谷社長の言うように、「100年続くカードゲーム、アクエリアンエイジ」にするためには、どだい中井氏1人で制作するには無理があるのだ。
 完成度を高め、もっと多くの人に楽しんでもらうようにするには、 もっと多人数のクリエイターでの調整が必要なのである。

 無論、スポイルされるところもあるだろう。だが拡大されるところもあるはずだ。
 プラスマイナスを繰り返し、無駄をそぎ落として行けば、"アクエリアンエイジ"は100年持続する完成度を得られるかもしれない。


 ふたつの方法を、オレは意見した。

1.中井氏の意見を却下、ということでなくアドバイザーという立場で、外部からゲームデザイナーを数人呼び、デバッグを行うのはどうか。

2.大手サークルやジャッジなど、プレイヤーの有志を募り、製作者である中井氏と直接に意見交換してもらうのはどうか。
 プレイヤー側に不満があるのは間違いないので、意見をブロッコリーさんに取り入れてもらうのは大きな喜びになると思う。

 この意見はある程度は受け入れられた。
 1.については中井氏が難色を示し、実現は難しそうだ。
 あくまで「自分1人で作りたい」というこだわりがあるようだ。
 クリエイターとはエゴの塊であり、だからこそクリエイターたりえる点もあるのだが、 新しいものを受け入れ続けるからこそクリエイターであり続けることが出来る、という点でも不安が残る。
 また、"1人の責任"と背負い込むにしても、あまりにも大きな事業。"アクエリアンエイジ"がダメになれば、 ブロッコリーが傾きかねないということについては、どうお考えなのか。

 2.については、ネット上での意見交換のシステムを作ると言うことになった。
 多少前進したようにみえるが、どんな意見が来ても中井氏が受け入れられなければ、 結局それで終わりだ。

 つまりは、中井氏が変わらなければ"アクエリアンエイジ"は変わらない、ということだ。


 これで良いのか? ダメなのか?
 これ以上は"アクエリアンエイジ"をオレより理解し、オレより愛しているプレイヤーの皆さんに任せることにしよう。

 方法はいろいろある。オレはこれ以上は語らない。
 自分で考えることだ。
 ただひとつ、メーカーが耳をふさいでいるワケではない、と言っておこう。




 次回予告

 話はタカラのデュエルマスターズへ!

 トレカとカードゲームはどう違うのか?!

 カードゲームは子供の教育に良い?!

「デュエルマスターズのデッキ診断に400件も応募がありました。」
「なんでそんなに来るんです?!」

 2次会、3つのグループに分かれたはずが、全員オレのテーブルに来てますが?!

「だから何で"ゲームぎゃざ"の表紙は女の子なのよ! カードゲームの本ってわかんないわよ!」
「政治的にね…」

 次回、もうちょっとくだけた感じでお伝えします(今回まじめすぎてすいません)。

カードゲームサミット戦記第3話

『会議はおどる、されど進まず』

「もうちょっと食っときゃよかった…」


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