□コカコーラに付いて来るカード・その販売戦略の効果と問題点
ええと、皆さんご存知でしょうが、8月15日からこういう商品が発売されています。
デュエル・マスターズスペクタクルセット(全5種類)各600円(税込み)
○商品内容:コカ・コーラ500ml缶、オリジナルカード、ネックストラップカードホルダー
今更感がありますが、まだ売ってはいますから、このセットについているカードをご紹介してみましょう。
■プロモカード攻略
フレアメタル・ドラグーン
7コスト ティラノ・ドレイク パワー7000
■W・ブレイカー
■このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、相手の「ブロッカー」を持つクリーチャーを1体破壊する。
すでにご紹介しましたが、“ティラノドレイクデッキ”、実はけっこう、やりおります。
そして現在のところピンとこない事ですが、“ティラノドレイク”が新種族である以上、これからもどんどん、“ティラノドレイク”の種族デッキが、強くなっていくであろう事は予測されます。
そんな時。「この【フレアメタル・ドラグーン】が絶対入る!」というデッキができる可能性は・・・スペック(能力)から考えて、十分あり得そうなのです。
十分なサイズを持ち、マイナス能力がないばかりか、ほとんど常に役立つ「ブロッカー破壊」という能力を持つ“ティラノドレイク”・・・・。
今や生産停止となっている“双龍誕生・勝舞パック”に【紅神竜ガルドス】というカードがありまして、これを3枚以上持っていないと【チッタ・ペロル(14弾)】の真の力を発揮できないように、後から手に入らないカードに「代えの効かない力」を与えるのは大変危険です。
ましてや、“ティラノドレイク”は最近始めた子供たちが使おうとしている、「これからの種族」。
ここで手に入れた子供と、半年後にDMを始める子供に、「ティラノドレイクデッキを作れるかどうか」という大きな差を与えてしまう事にならなければ良いのですが、おそらくタカラトミーさんも何かお考えの上での事でしょう。
猛烈元気バンジョー
4コスト ドリームメイト パワー1000
■このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札を見る。その中からドリームメイトを1体選び、相手に見せてから自分の手札に加える。その後、山札をシャッフルする。
とても強力なカードです。
今のところは弱い“ドリームメイト”ですが、これも新種族なので、今後どんどん種類が増えるでしょう。そうなればいつかはデッキのメインテーマにもなりえると思います。(ドリームメイトは全体的にコストも軽めですしね)
で、確実に1枚の手札補充を得るばかりか、その時々に応じた特殊能力を持つ“ドリームメイト”を持ってこれる“ドリームメイト”ですよ?!
【鳴動するギガホーン(18弾)】と似てますが、明らかに仕事が違います。なんせ自分も“ドリームメイト”なんですから、進化も簡単に持って来れます。
また、種族を統一する事は、【光器ペトローパ(9弾)】による強化、【凶星王ダークヒドラ(ジェネレーション)】による回収などのメリットがあるため、ますますもって、ドリームメイトデッキでは【ギガホーン】の上位互換になるでしょう。
2枚か3枚は手に入れておかないと、いざというとき、完璧な“ドリームメイトデッキ”は作れなくなるかも。
霊騎ジャムシール
3コスト アーク・セラフィム 2000
■ブロッカー
■このクリーチャーは、相手プレイヤーを攻撃できない。
■このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンに自分のアーク・セラフィムが他に1体でもあれば、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選びタップしてもよい。
これまた地味ですが、確実に強力、必要なカードです。
と、言うか、すでに現在、これを4枚もっていないと完璧な“アークセラフィムデッキ”を作れません。
作れる事は作れますが、デッキの完成度に格段の差が開きます。
コストが軽いことで優秀な進化元となり、また、光最強カード【雷鳴の守護者ミスト・リエス(ドリーム)】によるドローにも適しています。
しかも、便利なブロッカー。そのうえ“アークセラフィムデッキ”では大活躍する特殊能力付き。
タップ&デストロイ戦術は、光・自然デッキの得意戦術ですからね。
【マリクス】を出しておいて、【ジャムシール】で相手タップ。【マリクス】で破壊。
イニシエートデッキで、【鎮圧の使徒サリエス(18弾)】→【雷光の使徒ミール(18弾)】の制圧力がどれほど役に立ったかをご存知の方ならば、
「やばい! 【ジャムシール】は必須だ!」
ともうお気付きでしょう。
2マナ、パワー3000ブロッカー・・なんていう使いやすい“アークセラフィム”が出ない限り・・・いや、出たらなおの事使うことになりそうなカード。
今のところ、アークセフィムの進化獣では、「必須」と言えるほど強力なカードはありませんが、今後もどんどん出てくる事でしょうから、進化元としての需要もどんどん上がってくるでしょう。
要するにこれも、これからDMを続けるならば、4枚持っておかなければならないカードという事です。今回のローソンカードの中で最強と僕は見ています。
無敵巨兵パラディーンS
1コスト グレートメカオー パワー4000
■進化
■クリーチャーが、このクリーチャーとのバトルに負けて破壊される時、そのクリーチャーを墓地に置くかわりに持ち主の手札に戻してもよい。
これはどうでもよいカードです。
コストがもっとも軽い進化獣という事で、大変かわいらしいクリーチャーなのですが、進化してもパワーは4000で、「それで、何がしたいの?」という感じ。
バトルで破壊したクリーチャーを手札に戻すのも、だいたいは素直に墓地へ行ってもらったほうが嬉しいマイナステキスト。
【飛行男(ドリーム)】や【屑男(ドリーム)】などの、「墓地に落ちたとき何かをするシリーズ」相手の時ぐらいしか役に立ちません。
(もっとも、「戻してもよい」なので、戻さなくても良いのですが)
しかし、もしも今後、「場に進化クリーチャーが出た場合・・・」というテキストで、ぶっ飛んだ能力のカードが出た場合、「最低コストの進化獣」という“オンリーワン”が注目される事になるかもしれません。
封魔ダイダロギヌス
6コスト グランド・デビル パワー4000+
■このクリーチャーが攻撃する時、バトルゾーンにある自分の他のグランド・デビルを1体破壊してもよい。そうした場合、そのターンの終わりまで、このクリーチャーのパワーは+8000され、「W・ブレイカー」を得る。
パワー11000になるので【ボルメテウス・サファイア・ドラゴン(ドリーム)】に殴り返して相打ちできます・・・
が、グランド・デビルデッキはすでに、【スナイプ・アルフェラス(19弾)】によるドローエンジンにより、「数で押す」という戦術が確立されています。
その中で、6マナはそうそう入るコストではありません。同じ6コストなら【封魔ラベリーズ(19弾)】を使いたくなりますね。
特殊能力としても、今後必要になるとは考え難い能力です。
大型クリーチャーに殴り返すなら、【クエイク・スタッフ(14弾)】などを使えばよいのですから。
★デュエル・マスターズスペクタクルセットは何のためのキャンペーンなのか?
■実際、どんな人が買うのか
通常のコーラよりは高いので、「ジュース買ったらカードが付いてきた。なんだろうこのカード? 僕もやってみようかな!」というお客さまは100%あり得ません。
では、DMを知っている、遊んでいる人にとってはどうでしょうか?
600円と言えば、パック約4つ分。
簡単に言うと、カード20枚と1枚、どっちがいい?というわけです。
今後手に入らないかもしれないプロモ1枚のために、600円を出す。
これは、間違いなく大人の感性です。
子供たちにしてみれば、それがプロモであろうと無かろうと、カード20枚という「数」がものを言います。
いわんや、パック4つで、もしかしたらスーパーレアが当たるかもしれない!のですから、スペクタクルセットを買うお金があれば、ほぼ間違いなくパックを4つ買うでしょう。
よって新規客層を取り入れるイベントにはならず、お父さんお母さんが子供たちにねだられる事も・・・パックとの競合がある以上難しいでしょう。
■キャラクター告知としてのキャンペーン
では、これは一体、何のために始められたキャンペーンなのでしょうか? まったく意味が無かったのでしょうか?
そんな事はありません。
イメージ広告としての意義は果したのではないか、と思います。すなわち、より一般層に対する、
ローソンで目立つコーナー展開で販売している。
↓
DMって、流行ってるんだな。
という、「流行りものである」というイメージの刷り込みとしては。
デュエルマスターズという商品が多くの人の目に触れるため、「なんだか盛り上がってる感」を社会的に与える事ができる、という事です。
また、ローソンでイベントを行う、というのは商品的には一つのステイタス。
「カードゲームという商材の性格」を知らない人に対しては、まったくマイナスの見えない、充分な告知活動なのです。
そのためにも、定価販売の飲み物にオマケとしてぶら下がっているプロモーションではなく、目立つオリジナルパッケージで店頭に並ぶ必要があったわけです。
あの不自然なまでの大きさ、種類ごとに色と絵が違うパッケージ、これらすべてにメーカーの考える告知戦術の筋が通っています。
すなわち、売れる事が大事なのではなく、「店頭に並んで『DMが元気だ』という広告となる事」が第一目的なのではないでしょうか。
(安売りなんかが始まったりしたら、「流行ってない」ように見えてまったくの逆効果となりますが)
ゲーム性うんぬん、限定プロモの危険性かんぬんといったカードゲーマーの視点ではなく、「DMという商材の活性化」というマクロな視点で見れば、今回のキャンペーンは、やらないよりもやったほうが良かったイベントだと思います。
「その物」に興味が無い、不特定多数の人々にそのキャラクターを見てもらう事は、とても大切な事です。
興味が無くても知っている。
それはすなわち有名で、多数派で、つまり安心できるものなのだろう。買い与えても良いだろう。持っていても普通なのだろう。
社会的イメージはこうして作られていきます。
余談ですが、東京の生活の中心、山手線では、毎年夏になるとポケモンのスタンプラリーが開催されます。
東京都内を移動すると、必ずポケモンのキャラクターが目に入ります。
これを見て、都民は毎年思うのです。「ああ、ポケモンは今も元気なんだな」と。
こうしたイメージを作り上げる事が、そのキャラクターコンテンツにどれだけプラスがある事か。それがわかっている人たちが、そこに投資するわけです。
そうした、「カードゲーマーの視点」と違う、「キャラクタービジネス」の冷静な視点を持って考えれば、今回の“デュエル・マスターズスペクタクルセット”が何を目的に行われたか、何を持って成功と考えるべきか、見えてくるのではないでしょうか。
確実にはっきりしているのは、今回のプロモーションが、マクドナルドなどで行われた後に行われている以上、メーカーとしては「効果が大きい」「DMという商材にとって得るものが大きい」と判断しているという事なのです。
それには、大掛かりなリサーチ、様々なデータ収集があったことでしょう。
そしてマクロな視点から見れば、おそらくはメーカーの判断は正しいのです。
■ゲーマーの視点は無視されているのか?
しかし、僕たちには、確実に発生するマイナスが見えています。
今回のプロモーションで、将来の新規参加プレイヤーのモチベーションと、デッキ作りの幅を狭めてしまう事実。
「DMをちょっと買ってみたら“アークセラフィム”の良いカードを引いたよ。アークセラフィムデッキで始めてみようかな?」
「【霊騎ジャムシール】を持って無いだろう? だったら完璧なアークセラフィムデッキは作れないよ」
「なあーんだ。がっかりだよ。じゃあ止めるか」
こうした事で発生するマイナスは、数字には直せません。しかし数字に直せないからといって、確実に「あるのが間違いない」マイナスを無視するのは危険です。
ですので、メーカーさんも、さすがにそこは考えているのではないでしょうか。
そう。マイナスを完璧に無くすのは簡単です。
今回のプロモーション・カードと全く同じカードを、次のエキスパンションに入れればよいのです。(絵違いでも良いですが)
こうすれば、「先に手に入れたい!」という人はコーラを買いますし、後からの新規ユーザーも不公平なく必要なカードを手に入れることができます。
そもそものキャンペーン目的は「DMの盛り上がり」を告知するという、マクロな視点のプロモーションでしょう。
まさか、「手に入らないカードがあるからセットを買え!!」という小さなものではないはずです。
それはちょっと、日本を代表する玩具メーカーである、タカラトミーさんのレベルからは考えられません(笑)
ですからきっと、今回のプロモーションカードは魅力的なカードの先だし公開で、次か、その次の弾に同じカードが入っているのだと思います。「今回限定!」とは何処にも書いていなかったと思いますし、そんな事をしても何もなりませんから。
■問題点は・・・解決可能
・・・と、褒めちぎっているように見えますが、では、まったく問題は無かったのでしょうか。
いやもちろん、僕の今までの言動をご理解してくださっている方々ならば、そんな事は無いとお気付きでしょう。
カードゲーマー的視点と、キャラクタービジネス視点、両方で見れば、「更なるクオリティ」が見えてきます。
色々と疑問も見つかりますが、話を簡単にしましょう。
僕としては、
「今回のプロモーションカードは、限定カードであったのか、単なる先行配布プロモであったのか」
これだけが問題と見ています。
そう。さっきも書いた通り、今回コーラに付いたカードが、あとから発売する弾に加えられる「先行販売」であれば、問題は一切ありません。
問題があるとすれば、それは、
「今回のカードがもう手に入らない限定カードで、しかも今後必須となるような強力なカードであった場合」
です。
今回のプロモが【ダークヒドラ】のような、
「それを持っていなければ、多くのデッキタイプが作れなくなってしまう!」
というようなものであれば、それは今後入ってくる新しいプレイヤーに対して、「門を狭める」事になってしまいます。
また、限定プロモ乱発で滅んだ過去のゲームの経験から、消費者がそうしたゲームの展開に強い嫌悪感を持っている事も、当然のようにタカラトミーは理解しているはず。
ネットのプレイヤーの意見をかき集め、実際にゲームをしている子供たちの立場を考え、市場調査をきっちり行っていれば、それは当たり前でしょう。
今回のプロモは全て新種族で、そのうち何枚かは、本当に今後必要となりそうなカードです。
第19弾で新種族が多数投入されたのは、新規ユーザーにとって始めやすく考えられたものなのは、疑いありません。これは実際、大成功していると思います。
その、
「新規ユーザーのために優しい、これから、または少しあとから始める人にとって作りやすい新種族デッキ」
という仕込みを、一時的なキャンペーンのためにぶち壊すとは、到底考えられません。
そんな道理から考えても、今回のカードは先行プロモになって然るべきです。
多分、タカラトミーさんは、そこは考えていらっしゃるはずです。
しかし本当のところ、僕としては絵のカッコいい、DMを知らない人が見ても「凝った完成度の高い絵だな」と思えるような、過去のカードの再録(絵違いがベスト)が一番良かったのではないかな?とも思えます。
広告としてはむしろその方が効果大(人気の絵を集めるのだから当然)ですし、今までのプレイヤーさんにも、余計な心配を与えません。絵違いを集めたい、と思う人も少なからずいたでしょう。
まさか・・・まさかこのコーラのセットを「売るためだけに」、完全限定プロモにする、なんてミクロな視点での展開は無いですよね?
そもそも、子供たちには今回のカードの能力、さっぱり魅力的ではないのですから。よりにもよって、玄人好みのカードばかり。
もし、「売るため!」であったとしたら、今回のように玄人好みのカードにする必要は全然、なかったでしょう。
「売るため」であれば手段は簡単で、各色、ドラゴンやデーモンなどの、絵がカッコいい、「特殊能力が無くて、ただでっかいだけのクリーチャー」にすればよいわけです。その方が子供たちは大喜びです。
と、疑問は残るのですが、これに関しても、僕なんかの気付かない、真っ当な理由がおそらくはあるのでしょう。
ゲーム性の結論から言えば、どうやら今回のカード、今後持って無いとやばそうなものも一部あるので、「先行プロモである」と信じたいところです。
タカラトミーのカードゲーム事業部を、僕は信じたいと思います。
PS
春のローソンキャンペーンのカード、【ヘリオス・ティガ・ドラゴン】の再収録はぜひ急いでいただきたいところです。
あれがないと作れないデッキが多くて、持っている人と持っていない人の差がありすぎ。
最近始めた子供たちが手に入らなくて、相手に使われてがっかりしています・・・なにしろグランドデビルデッキを相手にしたときにものすごく効くので。
ヘリオス・ティガ・ドラゴン
7コスト アーマード・ドラゴン 7000
■このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、相手のパワー2000以下のクリーチャーをすべて破壊する。バトルゾーンに自分の《白虎の剣皇ダーク・サラマンダス》が1体でもあれば、パワー2000以下のかわりに4000以下の相手のクリーチャーをすべて破壊する。
■Wブレイカー
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