年末年始・カードキングダム各店巡業 出発編・カタヤマ編・伊勢崎編
■出発編
冬休み、フランチャイズ各店様を順に巡り、お客さんたちと書くカードゲームで対戦して楽しもうというイベント、「池っち店長袋叩きデュエル大会」。
目的は4つある。
1・お客さんと楽しく遊び、年末年始イベントとして盛り上げる事。
2・お客さんから昨今のカードゲームに対しての意見を募り、今後の僕の方針に生かすこと。
3・各店の売り場を見て周り、より良い売り場作りのためSV(スーパーバイザー)としてチェック。各店ごとの修正案を現場スタッフと具体的に作り出す。
4・各店の写真を取り、ホームページの記事にする。
この4つ。
1と2はお客さんとのコミュニケーションが成功すればできる事。
3と4はお店の人とのコミュニケーションで作り出していくものです。
もちろん、カードキングダムはフランチャイズだから、SVは使ってもらってナンボ。より良い売り場の為には、心を鬼にして徹底的にダメ出ししなければなりません。
幸い、各店が出来てから僕も寝ていたわけではなくて、新しく秋葉原店を作ったノウハウもあることだし、伝える事は色々ある。
それに売り場なんてものは、作った当初は最新型で、いかに効率良く出来ていたとしても、日常の業務の都合で変化して行き、「あとで直そう」と思っていたものがそのまま放置されていたり、本当はベストな作りでなくとも日常の中に埋没して、感覚的に「おかしい」と気付けなくなっていたりで、色々と“歪んで”くるもの。
本当なら直さなければならない所も、毎日見ていると「これでいいか」と磨耗してしまう。
忙しい店なら、なおさらだ。そしてカードショップはいつだって忙しい。
時折、第三者の目で厳しくチェックしないと、「直すきっかけ」が無いんだよね。
それはそれとして、群馬県カードキングダム・カタヤマ店に行く前日、ちょっと落ち込む事があった。
なので、練馬の店員ヤナーに、「医者に止められている酒を飲んででも、無理矢理テンションを上げるべきなんだろうか・・・・」と訊いてみた。
ヤナー「何を言ってるんですか! 体とテンションのどっちが大事だと思ってるんです?!」
俺 「・・・テンションかなぁ」
ヤナー「わかっていれば良いんです!!」
・・・・相変わらずすげぇな、コイツ。
■カードキングダムカタヤマ編
一晩寝たら、気分はコロッと回復した。さあ、出発だ。
“カードキングダムカタヤマ”は、群馬県沼田市にある。東京からは約3時間。はっきり言って、超・山奥である!! しかも、台地の上にあり(と、いうか沼田市そのものがほぼ台地)、駅から歩いていくのはかなり苦しい。
はっきり言って、典型的な「いなかのおもちゃ屋さん」だ。
しかし! にもかかわらずなぜわざわざデュエルスペースを作り、カードキングダムフランチャイズに入ってまでカードコーナーを維持する必要があったかと言うと・・・
やはり、「地域密着」と「他店との差別化」のためなのだ。
前にもどこかでちらっと書いたと思うけど、この機にもう一度書いておきたい。
昨今の業界紙でも書かれている事だが、玩具業界の浮き沈みのなかでも確実に“下がり続けて”いるのは、「従来の玩具店の必要性」だ。
要するに、普通の商店街のおもちゃ屋さんの立場が、どんどん小さくなってきているという事。
年末年始にまとめて買いに行くときは、郊外の大型店・・例えばトイザらスなどに買いに行く。(郊外型は郊外型で、平日の売り上げが厳しいのだが)
平日、会社帰りなどに大人がホビーやテレビゲームを買うのは、通勤駅のそばや国道沿いの量販店だ。
ショッピングセンターでは、最近は「玩具店が無い」ところも多い。
年末年始の一時期だけ玩具コーナーを作ったりする。つまり日常では「玩具店は必要ない」と判断するショッピングセンターも出てきているという事だ。
そんな中、従来の「町のおもちゃ屋さん」が生き残るには、「地域に密着して毎日でも遊びに来てもらう」事と、「大型店や量販店では不可能な、細やかな情報サービス」の2つで、他業態との差別化を図らなければならない。
そのためのブレイクスルーが、カードゲームの専門化という手段だ。(フランチャイズ的にはその“後”も考えているが)
簡単に言うと、「ここに来れば対戦して遊べる」という“場所”と、「ここにくればカードゲームがより面白くなる」というデッキやコンボの“情報”と、「作りたいと思ったデッキを、確実に作る事ができるようシングルカードが全部揃っている」という“モノ”の充実。
これらを全て用意する事で、「他に無いサービス」を作り出す事だ。
代わりが無いから、そこに来てもらえる。
来てもらえさえすれば、そこからはあらゆる商売につなげる事が出来る。
週に1・2回来てもらえれば、そのお客さまのライフスタイルに、その店は組み込まれた事になる。
そうすれば、例えばテレビゲームを買うときにも、値段が変わらないならばわざわざ他店に行かなくても、その店でついでに買ってくれるだろう。
遊びに来てもらえば、カードの新作が無いときでも、お菓子は買ってもらえるかもしれない。
お店は、まずお客様に「知っていただく」「来ていただく」所から商売が始まる。
カードゲームの専門コーナーが子供たちに求められているのならば、“来ていただく為にだけ”でも、町のおもちゃ屋さんには必要な武器と言えるだろう。
カードキングダム・カタヤマさんは、その流れにいちはやく気付き、一番最初にフランチャイズに加盟して下さったお店だ。
しかし、いかんせんめったにいける場所では無いし、最初の担当であった“本多君”は、独立して“カードキングダム伊勢崎店”を作っていなくなってしまった。
その後、なんだかんだで後継者の店員さんとは会えないでいた。フランチャイズ・SVとしては、今回の訪問で相当ブラッシュアップし直さなければならないだろう。
練馬から乗り換え四回。途中、新幹線も挟んで・・やっと着きましたよ。
「沼田〜沼田でございます。扉はボタンを押して開いてください」
電車の扉が手動。なんて微笑ましいんだ。
「・・・・寒っっっ!!!」
そりゃそうか。東京からほぼ真北に来たんだもんなぁ。
冬の薄い日差しに沈んだような、趣はあれど寂しい町並みに、ここだけパァっと日が差したように明るい「おもちゃ屋さん」。
それが“カードキングダム・カタヤマ”こと「おもちゃのカタヤマ店」。人形店としても代々続く、由緒あるお店です。
「こういうお店に、ずっと生き残ってて欲しいよなぁ・・・」
元々玩具業界にいて、「最終的には、町の古いおもちゃ屋と一体化したようなサイボーグな爺になりたい」と考えていた僕としては、こうした店を見るたび原点を思い出します。やっぱり好きなんでしょうね。おもちゃ屋が。
このカタヤマ店、写真の正面入り口と違い、駐車場のある裏口があります。
実はこの、裏口こそが真の入り口と言いますか・・・初めて来ると、誰もが確実にビビリます(笑)
古い門の後ろに、鳥居があったりして、その横の細い路地をくぐって店に入っていくという・・・・
“千と千尋の神隠し”というか、“冥界の通廊”(笑)というか・・・とりあえず、「異世界への入り口」の雰囲気! 夜は一人で通れません。
お店の方も「おもちゃ屋さんで、これは無いわいな」と電飾を飾り付けて明るくしているのですが、むしろ逆に異世界感がアップ!
いやまあ、「カードキングダムの入り口は『カード天国・楽しい異世界の入り口』を演出云々」と言ってますが、この裏口は意味合いが違います(笑)
でも、一度目に驚いて、二度目に楽しくなる。良い意味でインパクトのある入り口。
常連さんが、裏口からしか入ってこない、というのもわかります。
カードキングダムカタヤマ店に御来店の際には、ぜひ裏口からお入り下さい(夜がお勧め)。 面白いですぞ。(ちゃんとお社に手を合わせてくださいね。理由は・・・見ればわかります)
怖いので写真にとって来ませんでした。(笑)
さて、売り場の改造点等を店員さんとお話した事については、ここでは削除。(そりゃノウハウの話だもんね)
とりあえず言える事は、春までには売り場が大きく、生まれ変わるんじゃないかな・・・と言うこと。改装したら、また特集でお伝え出来るかもしれません。
とりあえず、お集まり頂いた皆さんとは、楽しく遊ばせていただきました。
やってるカードゲームは“アップル・トゥ・アップル”ですが(笑)。もちろんメインはTCGで、デュエルマスターズも遊戯王もディメンションゼロもやりまくりました。
この日は大会が無かったので、小学生の子供たちは全然いませんでした。しかし高校・大学生のプレイヤーの皆さんから、色々と興味深い話が聞けたのは収穫でしたね。
やはりディメンションゼロのプレイヤーが多かったのですが、そこにいたメンバーでは、『萌イラスト』に抵抗があるとの考えでした。
「ディメンションゼロは、そうしたイメージから一線を画しておいて欲しい。発売当初そうしたイメージに惹かれて始めたのだから」との意見。
これは割合、多くの人たちの意見を反映していると思います。
僕個人としては、前にも書きましたが「絵柄の幅の広さ」もディメンションゼロの魅力と考えているのですが、はっきり「どっちだ」と言われると、個人的に好きなのは無論、当初からの「ハードな絵柄」の方。ドラゴンやゴーレムのカッコいいイラストです。
しかし、“萌イラスト”の境界線は実に微妙。
例えば【蜘蛛の巣を纏うフェアリー】のイラストを「萌だ!」と言う人はあまりおらず、「美しくて上品なイラスト」としてファンが多いぐらいなのですが、このイラストの「顔の部分」をアップにしたカードイラストにしていれば、「これは萌だ!」と言っていた人、けっこう多かったと思いませんか?
別に理屈で煙に巻くつもりはありませんが、多分に個人の主観で「そうだ」「そうじゃない」と判断されるものは、そう、「何度も試して、データを蓄積しなければ、ノウハウとして境界線を作れない」物なのでは無いでしょうか?
つまり、「これはどうだ」「このラインではどう判断される?」といった実験的絵柄のものを、「好きな人だけ選んで使う事のできる絵違いプロモーションカード」や、「多くのデッキにいやがうえにも入ってしまうカードでは無く、『テーマデッキとして使う人もいる』というカード」という、ゲーム性に影響しないカードに当てはめていく事で、どのぐらい受け入れられるか、どのぐらい拒絶されるかを少しずつ試しているのではないか、と思うのです。
【小さくて大きな力】のプロモ版に抵抗のある人は、自分は使わずに、参加賞として貰った分はトレードに出せば良いでしょう。
【レディ・アマリリス】を引いた人も、必須カードではないのですから、トレードに出せば良いトレード材料になるのではないでしょうか。
これがもし、【キューティ・バニー】のイラストが、1弾も2弾もものすごい萌イラストであれば、緑中心のデッキを作る場合に「萌イラストからの逃げ場無し!」になるのですが、現在のところ大まかに言って選択の余地はプレイヤーにあると思います。
これまた前も言いましたが、世の中にはもちろん、「“童子”のイラストが気持ち悪い!」という人もいるのです(無論、逆に童子マニアもいる)。
今はまだ、色々試してできるだけ幅広いプレイヤー層を取り込んでいく為の過渡期なのでしょう。
しかし確かに、カタヤマ店で僕と話してくれたプレイヤーさん達のような、「最初にドラゴンやゴーレムがカッコいいと思って始めたプレイヤー」の期待を裏切らないようにはして欲しいと思います。
実はセカンドセンチュリー以降では、「メカが描けるイラストレーター」を中心に集めている、という話を聞きました。要するにブロッコリーさんも考えてくださっているのでしょう。
理想は、「萌イラストが好きな方々に『欲しい!』と思ってもらえつつ、それ以外の人たちにも抵抗の無いイラストと、ハードでカッコいいイラストの調和の取れた世界感」では無いかな?と思っています。
実際のところ、我々オタクが思うより、一般の人たちの萌絵に対する抵抗はすごい速度で薄れていっていると思うのですが。(これは東京ならではの感覚か?)
メカが描けるイラストレーターさんが増えて、次作“暴走!機動要塞”のイラストがどのぐらいカッコ良いモノになっているか・・・楽しみなところですね。
・・・とまあ、色々と語り合ったり対戦を楽しんだりして、気がつくともう8時。
空気のいいところに来て無性に温泉に入りたくなったのですが、温泉宿が多いのは2駅向こうとか。
しかし安くて過ごしやすい、“湯に〜いく”という脱力系の名前の(笑)宿泊できるお風呂屋さんがあったので、そこで一泊。
露天風呂に入っているとちらりほらりと雪が。冷たくキーンと張り詰めた空気の中で、暖かいお風呂。極楽やんか。
これでお酒が飲めればね(笑)
■伊勢崎店編
沼田を出て、電車の都合的に、11時にカードキングダム伊勢崎店に着く。
『開店時間・13時』
まわりを見渡すが、時間の潰せる喫茶店も、コンビニすらも無い!
木枯らしは容赦なく吹き荒れ、とても寒い!
ついでにトイレに行きたい!!
危機! 果てしなく危機! モレール。
さまよう事20分、“紳士服のコナカ”を見つける。入ったからにはと買い物して、おしゃれ度をアップさせておく。ついでにトイレも借りる。
外に出てみると、古本屋さん発見。しめた。これで時間が潰せる。
が、入ってみてしばらくすると、実はその店、相当「やりおる」事が発覚。
「げげ! プレステ3が普通に売ってる! 何ィ! 中古ゲームソフトコーナーに“ネオジオポケットコーナー”“メガCDコーナー”“PCFXコーナー”が!!」
しかもそれらが全て、秋葉原より安く、それでいて『余っている』のではなく『わかっている』品揃え!
「み、水木しげるの“妖怪写真館”が7000円・・・コイツのためにネオジオポケットを買うのか?!
何いい! ファミコンの“沙羅曼蛇”が800円! これは買うだろ!
げげげぇ! 2D格闘ゲーム最高峰メガドラ幽遊白書が! 実は2個持ってて3つ目だが・・やはりキープしておくべきなのか?!
つうかメガドラコーナーがヤバくないか? “ダイナマイトデューク”! 長い間探してたような気がする! “ボナンザブラザーズ”、買うしか! “ミッドナイトレジスタンス”がなんで9000円なんだ?! 地球上で俺しかクリアした事無いと思ってたのに!
あきょおお! CD版“忍者ウォリアーズ”が! “クロスソード”がああ!!」
興奮のあまり理性を失い、気がつくと13時半。もうとっくに開店しとるやんけ!
開店してすぐだというのに、もう20人ほどのお客様が。
店長・本多君への挨拶もほどほどに、倉庫に荷物を置いて出てくると、真っ先に来てくださったのはやはり、12月22日の
“いけっち店長のひとりごと”でご紹介させて頂いたオヤジデュエリスト、“ヨワゴシ”さん!!
ヨワゴシさん「お待ちしておりました!」
僕 「いやいやこちらこそ、ようこそおいでくださいました!」
大人の挨拶の裏には、すでに戦いの炎が燃え上がっている。さっそくデュエルじゃああああ!!
わしゃコロっと忘れてたのですが、ヨワゴシさんのデッキは“独り言”でも書いていた通り、「耐えて耐えて逆転する、昭和のプロレスのようなデッキ」でした。
いやあ・・・そう言やそう仰ってたなぁ・・・何も考えず“重進化デッキ・ダーウィン”で戦っちゃいましたよ。
すごい戦いになりました。
光と水のデッキで、次々にブロッカーを並べるヨワゴシ氏。マナゾーンには【ダイヤモンド・カッター】が見えています。
「ほほぅ・・・そういうデッキか・・・数並ばれたら終わりだな。ゴクリ・・・・」
とか言いつつ小型クリーチャーに【レオパルド・グローリーソード】をクロスして、運よく引いていた【アストラル・リーフ】に進化。
続いて【護法僧リョクドウ】に進化して、マナを増やしつつマナゾーンの【超竜バジュラ】を手札に戻します。
「【バジュラ】を出したならば殴るのが礼儀と言うもの。それでは行きまっせ〜!」
と容赦なくパンチ。マナ2枚とシールド3枚を吹き飛ばします!
すると返しのターン、ヨワゴシ氏は何と、マナ破壊対策のナイスカード【シューノーク・ラー】を展開! オマケに【マリエル】でアタックそのものを封殺。
「ほほぅ・・・やりおりますな、ヨワゴシさん・・・しかし何処まで耐えられるかな?!」
相手がクリーチャーを十分並べたのを見計らっての、登場、【悪魔神バロム】!
ギャラリー「ぎゃあああああ!」「ひでぇ!」
壊滅するヨワゴシ軍。容赦なく殴る【悪魔神バロム】。
しかし再び【マリエル】を出して蘇るヨワゴシ氏。「昭和のプロレス」とは良く言ったもの。悪役レスラーの再三の凶器攻撃にも耐え抜いて、勝利をうかがうその姿。ギャラリーもため息をつく感動の粘り強さ!
『良くここまで受け切って下さいましたヨワゴシさん・・・そんなあなたに・・そんなあなただからこそ、この技を捧げたいッ!』
2回目の【悪魔神バロム】召喚。
この時点で最初の【青銅の鎧】の上には、【アストラルリーフ】【リョクドウ】【バジュラ】【バロム】【バロム】が重なっています。(毎度思うが、本当にデュエルマスターズのデッキか、これ。進化獣の重なった最高記録、実に9枚)
トドメに【聖剣炎獣バーレスク】まで出現して、「やりすぎ」な勝利。なんというか、“修羅の門”の名場面を思い出します。
「あの時点で決着は付いていた・・なのになぜトドメを刺した! 答えろ、いけっち!!」
「ヨワゴシ氏は、“獅子”だからだ。・・・だから【バーレスク】を使った」
すまん。難しいか。
その後、たくさんの子供たちと対戦していったのですが・・・なんで伊勢崎店の子供達はガチ勝負ばっかり挑んでくるわけ?!
皆さん、勘違い無きように。
僕は、「カードゲーム名人」と便宜上仕事として名乗る事はございますが、あくまで「イベントとしてカードゲームをするプロ」として“名人”なのです。
プレイングが上手くて、強いから名人なのとは、ちょっと違うのですよ。
そうですね。例えるなら僕は、プロサッカー選手じゃなくて、「自分もサッカーをしているけど、サッカーの選手になろうとしているのではなくて、プロサッカー組合を作ろうとしている人」のようなもの、と言えるでしょうか。
僕がプロとして誇れる仕事があるならば、それは、勝負に強い事ではなく、「カードゲームの楽しさを、店作りやデッキ紹介記事を通して数多くの人たちに伝える事」でしょうか。
だからもしも、「いけっち店長に勝ちたい!」と思うのならば、カードゲームの対戦で勝つのではなく、店作りのノウハウを真面目に勉強するとか、オリジナリティのあるデッキを構築して、それをたくさんの人に読んでもらえる記事として書き上げるとか、そういった事で勝負すべきではないか、と思います。
・・・まあ、小学生ぐらいの子供は、そんな難しい事考えないで、「相手が大人でも全力でぶつかる」事に意義があるから、それで良いんですけどね。
無論! ぶちのめしてやりましたが!!
いやしかし、遊戯王やってる高校生ぐらいの皆さんはやっぱり強かったわ。勝ったり負けたり。
ディメンションゼロに関しては、「本気で勝負したい」という方の気持ちはわかります。
もうすぐグランプリですし、いつもと違うメンバーとは、できるだけ練習しておきたいはずですからね(とりあえずディメンションゼロは全勝しました)。
プロプレイヤーでも何でもない僕ですが、まわりに強い人が多いので、多少の情報は話せます。
最近のメタゲームの動向、2デッキ制で使われるデッキタイプの予測。そしてその対抗策については、個人的に考えている範囲ですが聞かれたところは答えておきました。
少しは役に立てたかな?
さて、その後、高校生ぐらい?の青年がやってきて、「こんなカードゲームを考えてみたんですが、見てください!」と20ページぐらいのレポートを持ってきました。
さあ、社会人の皆さん! この行為のどこが全然ダメなのか、皆さんならわかりますね?!
僕を含め、その場にいた社会人3人は、同時に顔を見合わせて「ああ・・・」とため息。
ここで、「そうか。カードゲームを作りたいのか。うん。面白そうだね。頑張って」とニコニコ笑いながら言うのは簡単です。
しかし! 俺だったら、たとえ凹まされてでも、本当に身になる事を言ってもらいたい!
自分が中学・高校のときだったら、その頃は漫画を書いていたのですが、プロの人には「ここがこういう理由でダメだ」「ここはこうしなければ意味が無い」とダメ出ししてもらったほうが、進歩できたでしょう。
要は簡単です。
よしよしと頭をなでてもらって安心し、満足して、実際には何も進歩しないか。
徹底的にダメ出しされて凹まされても、本当に身になるアドバイスを受けて、現実のプロになる礎を得るか。
どちらか。
自己満足の中で温く生きるか、痛みに耐えて現実に力を掴み取るか。
選ぶのは自由。だから僕も、相手に選ばせました。
「中身も見ずに言わせて貰うが、俺は君に徹底的にダメ出しするぞ。なぜなら中身を見なくても、この分厚いレポートを見ただけで『ダメ』なのがわかるからだ。
凹むのがイヤだったら、それ以上俺に見せないほうがいい。しかし成長したいのなら、俺は喜んで徹底的にダメ出しさせてもらう。
ちなみに、優しく言うつもりはない」
「えっ・・・・」
明らかに動揺する青年。
つまり、この時点で「クリエイターになる覚悟」はまだ持っていない事がわかります。
「ちなみに、最初、そのレポートを見ただけで『ダメ』と判断した理由を言おう。
社会人なら誰でも知っている事だが、『こういう企画があります』と人に見てもらう事を“プレゼン”と言う。
“プレゼン”は、興味を持っていない人に興味を持ってもらうための“引きつけ”だから、一瞬で見る事ができて、しかもインパクトのある物でなければならない。
プレゼンの企画書は、できればプリント2・3枚。最高でも6枚ぐらいじゃないと、読んでもらえない。・・・そうですよね?」
まわりに居た社会人の方々に確認する。当然、全員同意。
「しかし君のそのプリントは、一見したら15ページ以上あるんじゃないか? 初対面の相手に、こんな文章量のある物を『読んでください』と言うのは、相手から、何の権利も無くそれだけの時間を奪おうとすることで、本質的に失礼なんだよ。それだけで、すでにダメなのがわかるんだ」
酷い言い方をしているが、僕は、「人間は傷つかなければ成長しない」と考えている人なので、「コイツは成長すべきだ」と思った相手に対しては言い方がきつくなる。
結果的にその方が本人の為だと思っているからなのだが、まあ、それで恨まれたりしても仕方が無い。相手の度量を信じるしか。
結局、彼は一旦退散した。まあ、普通はいきなり、「凹まされても絶対何かを得て、クリエイターになるぞおおお!!」と覚醒するはずは無いか。
が、彼は1時間後復活してきた。1枚だけプリントを持って。
「最初に何を見せるべきなのか?!」という中核を自分なりに選んできたのだろう。素晴らしい判断だ。大した成長だ。
「こういうカードデザインで、ここが今までのカードゲームと違うところなんです!」
「古い! 5年前のレイアウトセンスだ!」
それでもやっぱり、容赦が無い。
「イラストを入れる空間が小さすぎる! トレーディング・カードとしての魅力も無ければ、コレクター層の需要をみすみす逃す事になるぞ! 具体的にはこれこれこう、最近のカードゲームではこうした工夫がどうのこうの!」
「あうう・・・」
「加えて言うが、君の言う『今までのカードゲームに無い新しさ』は、具体的に何が面白いんだ?!」
「え?」
「『いままでと違う』事は、はっきり言ってどうでも良いんだ。『何が面白いか』が大切なんだ!」
「?」
「わからんか? これはゲーム、遊戯なんだから、本質的に『何が楽しいか』が大切なんだよ」
「それは、今までと違って弱いカードでも生かすことができるシステムで・・・」
「弱いカードを無理矢理使う事に喜びを見出すプレイヤーは確かにいる。
しかしそれは、『強いカードが強い』という前提の下に、逆説的に楽しむロジックとしてそうした需要が存在するんだ。それはつまり『枝葉の需要』だろう? そこを幹にして成り立つと思うか?
だいたい、『弱いカードを使いたい』という人と、『強いカードをぶん回したい』という人、どっちが多いと思う?
無理矢理弱いカードを使う人は明らかに少数派だ。ほとんどの人は強いカードを使いたい。そうでなければ殿堂ルールや制限ルールが作られるハズが無いだろう?
これは『弱いカードがあるなんておかしい』とか、『こうすればゲームバランスが取れるはずだ』という、『ゲームを見ているうちにそれに対する不満点が出てきて、その不満点を解決しようと思って作った』という、『ゲームから出てきたゲーム』に過ぎない。二次創作なんだよ。頭でだけ作ったものなんだ」
すごい難しい事言ってる。相手の目を見てみると、どうやらオーバーヒート気味だ。これは少しレベルを下げて、もう少しわかりやすい話にしなければなるまい。
「ゲームは、本質的に、感覚的に楽しいものでなければ“遊戯”にならない。
理屈を正当化するためのシステムであっても、それは作った人間の自己満足に過ぎない・・・ええい。わかりやすく言うぞ。
“テトリス”は、溜まっていったブロックが、まとめてゴソッと落ちたときに爽快感がある。
“ぷよぷよ”は、『プクプクしたものがプチンとはじける感覚は気持ち良い』と考えたデザイナーが、テトリスで作られた落ちモノパズルにその感覚をマッチさせて成功した。
スキーをやった事の無い人は、スキーで滑る感覚の爽快感を知らない。
ライブに参加した事の無い人は、あの一体感の恍惚を知らない。
人を楽しませるモノを作りたい人間は、人より多くの『楽しい』を経験して、身につけておかなければならないんだ。
頭だけで、理屈だけで作るな。
面白い、とは何かを体で知って、その何かをカードゲームで表現しろ。
鬼ごっこの面白さをカードで表現できると思ったらそうすればいい。
サッカーのフォーメーションをカードで楽しめると思ったらそれを目指せば良い。
例えばディメンションゼロは、カードゲームで一番盛り上がる、『ドロー』を任意で行えるようにしたところが面白さ、気持ちよさの一つだ。
君の考えたシステムは、残念ながら・・・今までのカードゲームへの不満から、理屈で作り出しただけの物だ」
彼はその後、別の人とも話していたが、そこでも徹底的にダメ出し(というかむしろデバッグ)されていた(システム的にも無理があったらしい)。
しかし、こういった話はそうそうできるものではない。彼が何かを得て次に生かすか、早々にあきらめて別の道に行くか。どっちにしろ無駄で無かったならいいんだが。
それにしても、各店で対戦してみて、どのデッキがどうウケるか発見していくのは面白い。
思ったとおりデュエルマスターズの最新デッキ“ダブルエックス”はどこでも大ウケ。コンボを決められた子供は呆然。その表情! やめられませんな(笑)
遊戯王は、練馬春日店に天才デッキビルダー“なりたサンダー”がいるので、子供達もみんな個性的なデッキを使っていて、「普通の強いデッキ」では逆に引かれる始末。だから、「ある程度強くて、しかも使っている人が少ないデッキ」を持ってきたんだけど・・・とにかくガチで勝負したい、という人が多いので閉口する。【冥府の使者ゴーズ】も【ネクロフェイス】ももう飽きたんだけど。
ディメンションゼロは・・・やはりやってみて問題だったのは、他のゲームと比較にならないほど時間が掛かるという事。
こりゃ、子供たちと遊ぶ「デュエルマスターズ・遊戯王の時間」と「ガンダムウォー・ディメンションゼロで遊ぶ時間」は分けた方が良いみたいやね。
そんな訳で、次は1月6日(土)岡山県カードキングダム岡山倉敷、1月7日(日)鳥取県カードキングダム米子。御来店よろしくね!
〒770-0813
徳島県徳島市中常三島1丁目3番地1号2F
カードキングダム フューチャービー徳島店
Tel(Fax):088-656-3823
e-mail:fb-toku@stannet.ne.jp